2015 年 54 巻 5 号 p. 331-339
2011 年東北地方太平洋沖地震では津波が沿岸各地を襲い,甚大な被害をもたらした.その巨大な規模から想定外が叫ばれたが,実は古文書や地形・地質の痕跡から,過去にも同様の津波が襲っていたことがわかっていた.このことから東日本大震災後,過去の地震や津波を探る研究(古地震・古津波研究)が注目を浴び,日本列島各地で行われるようになった.一方,行政は想定外をなくすために,過去の事実に関係なく,予め最大クラスの想定を行うようになった.あまりに巨大な想定は,かえって地元住民を困惑させることになってしまいかねない.そこで古地震・古津波の研究者は,新たなアプローチで過去の巨大津波の実態を解明しようと試みている.