2019 年 58 巻 1 号 p. 12-15
大阪湾など大都市を抱える内湾においては,大規模な地震・津波・高潮などの自然災害によって臨海部の石油コンビナートが被害を受けることにより,これまで経験したことのない大災害(Natech = Natural hazard triggering technological disasters)につながる可能性がある.本稿では,大阪湾岸域を対象にこの問題に取り組む大阪大学を中心とする研究グループの活動を紹介する.研究を行う上において,様々な場面で大規模災害を再現するシミュレーション技術が必要であり,また個々の事象を統合してリスク評価に結びつけるツールの開発も必要であることがわかった.さらに,これらの研究活動を地域のリスク低減にまで結びつけるには,まだまだ多くのハードルがあり,地域住民との地道なリスクコミュニケーションの必要性や諸外国に学ぶ点も多いことを指摘した.