2019 年 58 巻 5 号 p. 350-356
危険は意識した瞬間に激減すること,そして意識するためには気づくことが始まりであることを前報で述べたが,今回はこの気づく力を育て,高めるための着眼点について整理する.気づくためには,科学的原理原則,経験,事故事例等多くの知識が必要であるが,事象のノウホワイを意識する習慣,事故事例をその本質原因まで考える習慣,そして何より自らの頭で考えようとする姿勢が知の連鎖とも言うべき気づきの展開,すなわち気づく力の強化に大きく影響することを述べる.合わせて現場の基礎知識としてのマニュアルの位置づけや,教育の効果について論じるとともに,同じ知ではあっても,チェックリストではチェックできない,気働きとも言うべき感性,そして見えないモノや未知のモノが存在していることを認識しているという真摯な姿勢の大切さについても言及する.