2025 年 64 巻 3 号 p. 173-179
高齢者や歩行障がい者における側方転倒は , 骨折などの重大事故や寝たきりの原因となることから , 地 域生活の安全確保と事故予防において極めて重要な課題である . 本総説では , 転倒防止技術として磁気粘 性 (MR) 流体を用いた小型ブレーキとばね機構を統合した靴型装具を開発し , 足底の高さ調整による側 方転倒防止を目指した開発プロセスと人を対象とした実証試験について報告する . MR 流体は磁場強度に応じて降伏せん断応力が大きく変化する特性を持つ . 本研究ではこれを利用した 小型 MR ブレーキと慣性センサを用いた制御システムを開発し , 歩行路面の傾斜に応じて足底高さを調 整することで転倒防止効果を実現した . 健常成人 17 名への実証試験では , 転倒リスク指標の有意な改善 が示され , 転倒防止効果が示唆された . 今後は実際の生活環境に即した使用性の向上と安全性評価が求められる .