2018 年 4 巻 1 号 p. 13-18
本研究の目的は,高齢者の認知機能のなかでも特に軽度認知障害(MCI)に着目し,認知機能と身体機能,注意機能との関係を明らかにすることとした。地域在住高齢者54名の認知機能をミニメンタルステート検査により正常群49名と MCI 疑い群5名の2群に分けた。評価は,握力,大腿四頭筋筋力,上体起こし,長座体前屈,片足立ちテスト,30秒椅子立ち上がりテスト,Timed Up & Go Test,5 m 歩行テスト,50 m ラウンド歩行テスト,Trail Making Test(TMT)part A および B を測定した。その結果,正常群は MCI 疑い群と比べて,50mラウンド歩行テストの合計時間,構成要素のラップ 2 ,5 および TMT-B において有意に所要時間が短かった。今回の結果から,MCIが疑われる高齢者は,中距離の歩行能力や注意機能が低下している可能性が示された。このため,認知症対策のスクリーニング検査では,認知機能とともに,身体機能や注意機能も含めた包括的な視点で対象者を捉える必要がある。