高齢世代の投票参加率が他の世代に比べて高い理由に関しては様々な観点から議論されてきたが,本稿では,無作為抽出された成人男女4,000人を対象とする郵送調査から得られた1,474人の調査データを用いて,民主政治体制の下における普通選挙制度の理念と意義に対する有権者の認識に直接かかわる「選挙に行く理由」に着目して,投票参加率の世代差を説明することを試みた.「選挙に行く理由」を大きく「理念的理由」と「目標志向的理由」,「他人志向的理由」の3類型に分類して世代ごとに分析した結果,投票意志は,性や社会経済的地位,政治意識とではなく,「理念的理由」や「目標志向的理由」という普通選挙制度の意義と目的に沿った「選挙に行く理由」と関連しており,世代が上であるほど強く関連していること,そして,そのことが高齢世代の高い投票参加率に反映されていることが示唆された.