2018 年 12 巻 1 号 p. 59-69
本研究は,過疎化の進行する農村地域在住の二次予防事業対象高齢者に対して,事業への参加を阻害する要因を包括的に抽出することを目的とし半構造化インタビューを実施,質的検討を行った.25名(男性4名,平均年齢83.9±4.8歳)の対象者に対して,「介護予防事業に参加しない理由は何だと思うか」という質問によりインタビューを実施した.参加阻害要因の包括的な抽出が可能となるよう,エコロジカル・モデルの枠組みを参照した.エコロジカル・モデルは人の行動に影響を及ぼす要因を人の内的および外的要因の多様なレベルに着目した枠組みであり,エコロジカル・モデルで示されている5つの要因「身体的・社会人口学的要因」「心理的要因」「行動的要因」「社会的環境要因」「物理的・施策的環境要因」を参考にインタビューガイドを作成した.本研究では逐語録をコード化し,初めにKJ法のスキームに従ってカテゴリー化した.その結果15のカテゴリー,32のサブカテゴリーが抽出され,それらはエコロジカル・モデルの5つの分類に構成された.また,疼痛や活動制限,低い内発的動機づけや低い社会的サポートなど,先行研究を支持する要因が抽出され,さらに農村地域に特異的な関連要因として,「ゆさんこう」や「老人会」などの地域の伝統的な既存の自助組織の存在およびそれらに起因すると考えられる要因や地域特有の集団規範が抽出された.本研究結果から,高齢化および過疎化が深刻化することが予測される農村地域では,地域における既存組織やつながり,考え方を考慮した介入方法および広報活動の再構築が必要であると考える.