抄録
マレーシア,サラワク州のサゴヤシプランテーションにおいて開墾年度の異なる熱帯泥炭地で土壌および土壌溶液を深さに基づいて採取し,その理化学性を検討した.泥炭土壌の理化学性は泥炭層が深い土壌(DPS)と浅い土壌(SPS)との間で顕著に異なった.DPSでは多くの理化学性が深さに応じて変動した.電気伝導度,灰分および全窒素量は表層で高い値を示し,深さに応じて減少する傾向が認められた.一方,泥炭中の有機物の腐植化は深さの増加に伴い,高くなる傾向が認められた.また,DPSでは表層土壌の仮比重は約0.1Mgm-3の低い値を示し,開墾に伴う泥炭の分解による土地の圧密化を受けていないと判断された.
土壌溶液のpHも土壌同様に強酸性を示した.溶存有機態炭素,電気伝導度および酸度は土壌溶液の採取層位が深くなるほど減少する傾向を示した.また,全有機態炭素と酸度の間には有意な相関関係が認められ,酸度の主体が種々の有機酸であることを推測した.土壌溶液中の各陽イオン濃度の土壌中の全量に対する割合はイオンの荷電によって異なり,1価の陽イオンは2価の陽イオンに比べて土壌溶液中の割合が高かった.土壌溶液中の鉄含量は極めて低く.土壌中の鉄は有機物結合態の割合が高かった.
土壌の理化学性は泥炭の集積過程および生成環境を反映していた.鉱質土壌を有するSPSを除くと,サゴヤシの生育概況と土壌および土壌溶液の理化学性との間に明瞭な関係は認められなかった.