ヴァヌアツの 北部および中部諸島において,
Metroxylon salomonense (Warb .) Becc. と
M. warburgii (Heim) Becc.の分布,生育環境および利用形態を調査した.
M. salomonenseは北部のバンクス諸島に位爵 するガウア島の東部地域で1個体群 ,中部のマラクラ島では北部地域に2個体群,南部地域に1個体群 の計4個体群 の生育が確認された.一方,
M. Warburgiiはヴァヌアツ北・中部のいずれの島でも一般的に生育がみられた.ガウア島においては,
M. salomonense と
M. warburgiiは
takur dun,
tagura とそれぞれ呼ばれているのに対して,マラクラ島では両
Metroxylon植物は通常
natangura と呼ばれていた.しかし,マラクラ島南部の一部地域では,
M. salomonenseを、wild
natanguraとして区別して いる例もあった.エスプリット・サント島では
M. warburgiiのみ認められ,
natanguraと呼ばれていた.各島とも,
Metroxylonの生育地土壌は水分条件が十分であり,かつ排水は良好とみられた.現在,いずれの地域においてもサゴ(ヤシデンプン)の利用はみられないが,少なくともガウア島では1950年代までは救荒食として利用されていた.最も一般的な利用は屋根葺き材(アタップ)などの建築資材 としてであり,
M. warburgiiはもっばら屋根葺き材を作る葉を得るために栽培されている.
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