Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
10 巻, 2 号
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研究・調査報告
  • 川東 正幸, 隅田 裕明, 山本 一彦, 田中 治夫, 山口 千尋
    2003 年10 巻2 号 p. 55-63
    発行日: 2003年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     マレーシア,サラワク州のサゴヤシプランテーションにおいて開墾年度の異なる熱帯泥炭地で土壌および土壌溶液を深さに基づいて採取し,その理化学性を検討した.泥炭土壌の理化学性は泥炭層が深い土壌(DPS)と浅い土壌(SPS)との間で顕著に異なった.DPSでは多くの理化学性が深さに応じて変動した.電気伝導度,灰分および全窒素量は表層で高い値を示し,深さに応じて減少する傾向が認められた.一方,泥炭中の有機物の腐植化は深さの増加に伴い,高くなる傾向が認められた.また,DPSでは表層土壌の仮比重は約0.1Mgm-3の低い値を示し,開墾に伴う泥炭の分解による土地の圧密化を受けていないと判断された.
     土壌溶液のpHも土壌同様に強酸性を示した.溶存有機態炭素,電気伝導度および酸度は土壌溶液の採取層位が深くなるほど減少する傾向を示した.また,全有機態炭素と酸度の間には有意な相関関係が認められ,酸度の主体が種々の有機酸であることを推測した.土壌溶液中の各陽イオン濃度の土壌中の全量に対する割合はイオンの荷電によって異なり,1価の陽イオンは2価の陽イオンに比べて土壌溶液中の割合が高かった.土壌溶液中の鉄含量は極めて低く.土壌中の鉄は有機物結合態の割合が高かった.
     土壌の理化学性は泥炭の集積過程および生成環境を反映していた.鉱質土壌を有するSPSを除くと,サゴヤシの生育概況と土壌および土壌溶液の理化学性との間に明瞭な関係は認められなかった.
  • 江原 宏, 内藤 整, 溝田 智俊, Ala Philimon
    2003 年10 巻2 号 p. 64-72
    発行日: 2003年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     ヴァヌアツの 北部および中部諸島において,Metroxylon salomonense (Warb .) Becc. とM. warburgii (Heim) Becc.の分布,生育環境および利用形態を調査した.M. salomonenseは北部のバンクス諸島に位爵 するガウア島の東部地域で1個体群 ,中部のマラクラ島では北部地域に2個体群,南部地域に1個体群 の計4個体群 の生育が確認された.一方,M. Warburgiiはヴァヌアツ北・中部のいずれの島でも一般的に生育がみられた.ガウア島においては,M. salomonense M. warburgiitakur duntagura とそれぞれ呼ばれているのに対して,マラクラ島では両Metroxylon植物は通常natangura と呼ばれていた.しかし,マラクラ島南部の一部地域では,M. salomonenseを、wild natanguraとして区別して いる例もあった.エスプリット・サント島ではM. warburgiiのみ認められ,natanguraと呼ばれていた.各島とも,Metroxylonの生育地土壌は水分条件が十分であり,かつ排水は良好とみられた.現在,いずれの地域においてもサゴ(ヤシデンプン)の利用はみられないが,少なくともガウア島では1950年代までは救荒食として利用されていた.最も一般的な利用は屋根葺き材(アタップ)などの建築資材 としてであり,M. warburgiiはもっばら屋根葺き材を作る葉を得るために栽培されている.
  • 佐々木 靖, 近江 正陽, 冨永 洋司, 福田 清春
    2003 年10 巻2 号 p. 73-78
    発行日: 2003年
    公開日: 2023/07/06
    ジャーナル フリー
     本研究では サゴヤシ澱粉抽出残渣 (以下サゴ残渣)の有効利用を目的として,木質資源的性質の分析を行った.まず,解繊したサゴ残渣試料を用いて細胞の組成及びサイズの観察を行った.その結果,サゴ残渣はほとんど柔細胞から成ることが明らかとなった(占有面積率 約 85%).また,繊維や道管の含量は低く,しかもそれらは著しく損傷 していた.これらの結果からサゴ残渣は繊維原料としては適さないことが示された.次に粉体試料としてのサゴ残渣の性質を評価するため,粉砕性・内部表面積・七ルロースとデンプンの結晶性の評価を行った.これら分析の結果,サゴ残渣は,スギと比べてはるかに粉砕しやすく,セルロースの結晶性はボールミルのような簡便な処理で低下させることが可能であり,その内部表面積は再生セルロースよりも大きいことが示された.サゴ残渣はこのような利点を持つため,利用法の一つとして化学修飾用粉体原料などに適した材料であることが示された.
第11回講演会報告要旨
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