抄録
サゴヤシデンプンを水産ねり製品に利用することを目的として,スケトウダラ冷凍すり身の直接加熱(80℃,20分)及び二段加熱(30℃,30分−80℃,20分)法によるゲルの物性に及ぼすサゴヤシデンプンの影響を馬鈴薯デンプンと比較・検討した.
両加熱ゲルの破断強度,破断伸び及びゲル強度はサゴヤシデンプン添加量が増すことによって増加したが,馬鈴薯デンプン添加の場合より,その効果は小さかった.また, 二段加熱における30℃での予備加熱の影響はゲルの物性値を大としたが,両デンプンの効果に対する影響はほとんどないものと判断した.
すり身ゲルの色は,サゴヤシデンプンを添加したゲルの方が馬鈴薯デンプン添加より明るく黄色味があった.
低真空走査型電子顕微鏡によりデンプンを添加したゲルの微細構造を観察したところ,すり身ゲルの網目構造の中にデンプン粒が見られ,サゴヤシデンプンの粒子は馬鈴薯デンプン粒子より小さかった.
以上の結果ならびにサゴヤシデンプンの膨潤度が馬鈴薯デンプンより小さいことから,サゴヤシデンプンによるゲル形成能の増加が馬鈴薯デンプンの場合よりも小さかったと推察した.