抄録
前報において,すり身を80℃で調製したゲル中では,直接加熱および二段加熱ともに,サゴヤシデンプンの粒子が馬鈴薯デンプンより小さかった.これはサゴヤシデンプン粒子の糊化温度が馬鈴薯デンプンよりも高いためと考え,本実験では,二段加熱を用いて更に高い90℃で加熱ゲルを調製し,ゲル物性,色,微細構造等について80℃加熱の場合と比較・検討した.その結果,90℃加熱では,いずれのゲルの物性値も80℃より大となり,サゴヤシデンプン添加ゲルと馬鈴薯デンプン添加ゲルとはほとんど同じ物性値を示した.また,90℃で加熱した場合,サゴヤシデンプン添加ゲルは明るさ(L値)及び黄色味(b値)が80℃で加熱したゲルより低くなり,馬鈴薯デンプン添加したゲルとほとんど同じレベルであった.低真空走査型電子顕微鏡により,90℃加熱したゲル中のサゴヤシデンプンの粒子は80℃で加熱したゲル中の場合よりも大きかった.しかし,馬鈴薯デンプン粒子は90℃及び80℃で加熱したゲルの中でほとんど同じ大きさであった.
以上の結果から,二段加熱における最終温度を80℃よりも90℃にすることにより,サゴヤシデンプン添加すり身ゲルの物性は馬鈴薯デンプンを添加したゲルとほぼ同じになることが認められた.このことは,サゴヤシデンプン粒子が80℃よりも90℃で更に膨潤し,馬鈴薯デンプン粒子と同じレベルの大きさになったことによると判断した.