Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
研究・調査報告
サゴヤシ澱粉抽出残渣から製造した生分解性プラスチックの引張強度特性
井倉 将人岡崎 正規木村 園子ドロテア豊田 剛己近江 正陽桑原 利彦秀野 雅之
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 15 巻 1 号 p. 1-8

詳細
抄録
 廃棄物として扱われているサゴヤシ澱粉抽出残渣を有効利用するために生分解性プラスチックを製造した。サゴヤシ澱粉抽出残渣とパーム油を酸触媒存在下で160℃、2時間反応させ、エステル化を行った。作製したエステル化物からエタノールとヘキサンの混合液(9:1)を用いて未反応油を除去し、エステル化プラスチックを得た。エステル化によりプラスチックの特性である熱可塑性が付加され、原材料(未処理)のサゴヤシ澱粉抽出残渣と比較して熱可塑性は増加した。サゴヤシ澱粉抽出残渣とパーム油から製造した生分解性プラスチック(P-SP)をケン化によるエステル化度、熱軟化点そして引張強度に基づいて評価した。酸触媒(塩酸)濃度が0から1 mol l-1に上昇するにつれてP-SPのエステル化度は徐々に上昇する傾向を示した。1mol l-1塩酸を触媒として用いて製造したP-SPのエステル化度は3.23 mmol g-1であった。P-SP(1 mol l-1塩酸)と未処理サゴヤシ澱粉抽出残渣の熱軟化点は、それぞれ約220、260℃であり、本研究ではエステル化反応により、特に熱軟化点が40℃低下した。PSPの引張強度は2.59から5.86 MPaであり、市販の生分解性プラスチックより低い値を示した。P-SPの育苗ポットへの適応には引張強度の改善が必要と考えられたが、サゴヤシと油ヤシが良好に生育可能な熱帯地域において、P-SPは育苗ポットに適した有用な生分解性プラスチックの一つとなるであろう。
著者関連情報
© 2007 サゴヤシ学会
次の記事
feedback
Top