抄録
サゴヤシ実生苗の初期生育に及ぼす土壌の種類(有機質土壌;OS,鉱質土壌;MS)と土壌水分条件(W1:湛水,W2:ポット側面中央部に直径1cmの穴を等間隔に10個あける,W3:ポットの底面に直径1cmの穴を5個あける]の影響を明らかにするために,インドネシア,南東スラウェシ州ポハラ地区,アベリサワ村近郊のラロマサラにおいて,2006年11月から2007年9月にかけて,2要因を組み合わせて2回のポット実験を行った。実生苗植え付け後,ポットは自然条件下に置き、少なくとも1日に1回は潅水した。土壌水分含量はMSに比べてOSで高く,また両土壌ともW1 > W2 > W3の順に高く推移した。土壌の種類と水分条件を組み合わせた条件下では,植え付け後6ヶ月目の地上部及び根の生育,養分吸収量への有意な相互作用はほとんどみられなかった。供試土壌の理化学的特性には大きな差異が見られたが,実生苗の初期生育に及ぼす土壌の種類の影響は,水分条件に比べて小さかった。水分条件は,地上部の基部直径に影響を及ぼし,W1 > W2 > W3区の順に有意に太くなったが,その他の地上部形質への有意な影響は見られなかった。一方,根の生育は地上部以上に土壌水分の影響を受け,W1区の太根(直径5mm以上)数はW2区やW3区に比べて有意に多くなり,さらに太根の総根長,中根(直径2-5mm)数及び中根のうち上向きに伸長した根の数は,W1> W2 > W3区の順に多くなる傾向にあった。これらの結果,根乾物重はW1 > W2 > W3区の順に,地上部/根乾物重比はW3 > W2 > W1区の順に高くなる傾向を示した。また,地上部の基部直径が太い実生苗ほど,太根総根長及び中根のうち上向きに伸長した根の数が多くなる傾向が見られた。今後は,さらに土壌水分の幅を広く設定し,サゴヤシの初期生育に及ぼす土壌水分の影響について検討する必要がある。