抄録
パプアニューギニア西部州,ストリックランド川流城地域に住むクボ族の定住集落シウハマソンにおける,1988年と1994年の2度にわたる調査の結果をもとに,北部に居住するクボ族の集落グワイマシ,シウハマソンで行われたパ族によるサゴ作りとの比較を通して,サゴ作りの生産性に差異をもたらす要因について考察した.シウハマソンにおけるサゴ作りの特徴は,削ったサゴヤシの髄を竹ざおで叩くことにある.この作業は,実作業時間の4分の1を占めており,シウハマソンにおけるサゴ作りの時間当たりの生産性を減ずる原因となっている.シウハマソンにおいては,時間当たりの生産性の低さを作業参加人数を増やすことで相殺しており,その結果,サゴヤシ1本当たりの生産性はグワイマシと同程度に維持されている.また,パ族のサゴ作りの時間当たりの生産性は,クボ族と比較した場合きわめて高いといえるが,これは,パ族が髄叩きをしないことのほかに,髄削りに使用する道具の違いによるものと考えられる.すなわち,クボ族では石斧を使用するのに対し,パ族では木製の削り具を使用しているのである.シウハマソンでは,これらの情報を知悉しているにも関わらず,今のところ技術の導入には消極的な状況にある.