抄録
人びとの生業適応にとってきびしい環境であるプラリ・デルタではサゴヤシは効半のよいエネルギー源である.本論文は,バロイ族を対象とし,栄養生態学および個体群生態学の視点からサゴヤシの利用と管理に焦点をあてたものである.1947年以来の集約化されたサゴヤシ栽培の結果,栽培品種数の減少とサゴヤシの密度の上昇が起こったが,これらは人びとの栄養状態の改普には結びつかなかった.1947年から1980年にかけてサゴデンプンの摂取頻度は変わらず,人口が増加したことは,サゴヤシの生産量の増加を示唆しているものの. それが限界値に達したか否かについては明かではない.本研究は,バロイ族の人口増加は食生泊の変化というよりは,保健サービスの結果もたらされた幼少期の死亡率の低下に強く起因することを示している.