抄録
サラワクにおけるサゴヤシ(Metroxylon sagu)の 62%は.伝統的に泥炭土壌で栽培されてきた.肥料は用いず,最小限の管理がおこなわれている.深い泥炭土壌では1haあたり年間15-20本の幹が収穫されるが,これは無機質土壌での25-40本より少ない.幹あたりの澱粉の収量は変わらないものの,成熟するまでの期間は無機質士壌で8-10年なのに対し泥炭土壌では12-15年である.この2つの理由から,泥炭土壌でのサゴ澱粉の収量はかなり少ないことになる.
伝統的な方法に基づいて集約的な栽培を行っても,泥炭上壌における幹形成の開始までの期間と成熟までの期間はそれぞれ約6年と約12年以上であり,ミネラルに富んだ土壌での4.5年と10年よりはるかに長い.泥炭土壌では成熟前の乾燥により葉冠が小さく10本かそれ以下の葉柄しかつけず,葉の全表面積が約90m2となり無機質土壌での220m2より小さくなる.また,幹の体積も約37%小さい.予備的な調査結果では,泥炭土壌と無機質土壌での類似した生長段階の幹あたりの澱粉収量は前者で後者のわずか23%であった.
深い泥炭層をもつ土壌がサゴヤシ栽培に利用されようとしているが,施肥に伴う問題をまず解決しなければならない.これがうまくいけば,年間に1haあたり乾重量で200kgの澱粉の収穫が期待できる.さらに,苗床をつくること,側枝の調整,間引き,病害虫やサゴ甲虫の防御,植えつける道具の改良など,まだよく知られていない点にも注意を払わなくてはならない.