Sago Palm
Online ISSN : 2758-3074
Print ISSN : 1347-3972
研究・調査報告
インドネシア,南東スラウェシ州の農村と農業
第2報 作物栽培の現状とサゴヤシの利用
西村 美彦
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1995 年 3 巻 2 号 p. 62-71

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抄録

 南東スラウェシ州の農業は,焼畑とサゴ採取農業を中心に営まれてきた.しかし,この農業形態では村人は自給生活を営むためのぎりぎりの所得しか得ることができない.村の伝統的な焼畑による作物収量は陸稲で平均1.5 t/ha,トウモロコシで2.5 t/haである.また,サゴヤシは先住民トラキ人の重要な主食の1つとなっている.クンダリ周辺のサゴデンプンの生産は乾季に水洗いの水に不足するため,デンプン抽出作業は雨季が中心となる.水の豊かなコナウェハ川流域の生産地からは,サゴヤシは年間を通してクンダリ市等の都市部に出荷される.また,湿地の分布する地域のサゴ生産地から周辺の村に供給されている.サゴデンプンは湿った状態で流通するので,日持ちが悪いが,かなり広い範囲にわたって移動することがわかった.サゴデンプンは米よりも価格は安く,都市部では安定して販売されている.しかし,村では需要と供給のバランスが価格に微妙な変動を与えている.これらのことを反映して,現在ではサゴ採取農業は水田農業に次第に置き換わりつつある.

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© 1995 サゴヤシ学会
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