抄録
サゴヤシの樹幹に蓄積されるサゴ澱粉から加工されたサゴパールは,直径約2~4mm程度の球状でスープの浮き身やゼリーなどのデザートに利用されている.サゴパールは加熱の際に煮崩れしやすく,均一な煮上がりを得ることが困難とされている.そこで芯がなく,透明で,弾力のある食感を短時間に得るための節便な加熱方法を検討するために実験を行った.サゴパール(マレーシア・サラワク州産)は,直径2.8-3.5mmで傷のないものを選ぴ出した.加熱方法は直火法と魔法瓶を用いるポット法の2種を用い,物性測定および加熱による経時的な形状および走査型電子顕微鏡による組織形態変化を観察した.結果は次のとおりであった.
1)サゴパールは直径が小さいために,いずれの加熱方法においても25-30分間の短時澗で加熱することができた.走査型電子顕微鏡による観察から加熱25分以降に澱粉粒の変化が認められた.加熱40分以降になると,サゴパールは弾力性が失われ付着性が増してべたつきが感じられた.
2)直火法はポット法に比べて煮上がる時間が比較的短く,直径が大きい軟らかい物性が得られた.しかし,芯のあるサゴパールが混在する不均一な煮上がりとなった.湯煎法は直火法よりも均一なパールが得られると推察されるが,ポット法よりも煮上がりは遅くなり,手間もかかると思われた.
3)ポット法は煮くずれせず,弾力があり,均一な煮上がりとなり,形状,テクスチャーの良いパールが得られる優れた方法と思われた.また,ポット法は加熱途中の攪拌や湯を補うなどの手間がいらないという点で,簡便で有効な加熱方法と考えられた.