抄録
ここに紹介するのは児童期にいじめと虐待を受けた女性Aの心理療法のプロセスである。Aは夫婦関係の破綻から起こってきた感情を言葉で整理することを求めて相談に訪れた。セラピストは彼女の感情を伴わない語りに共感することの難しさを感じていたが,その感情は箱庭のイメージを媒介として表現された。その治療プロセスにセラピストが感情を込めて関わることを経て,Aは自分の内面に閉ざされていた悲しみや寂しさ,怒りの感情に気づいていった。筆者は,Aの言語化へのこだわりは,自分の否定的な感情を抑圧・隔離している状態なのだと理解した。このアプローチを通して彼女は自分のイメージ表現を箱庭から夢へと発展させ,イメージ次元で治癒の歩みを始めることが可能になった。