2014 年 56 巻 6 号 p. 2028-2037
【背景・目的】われわれはESD時の粘膜下注入材として,アルギン酸ナトリウム(sodium alginate:SA)溶液に着目してきた.当時用いたSA溶液は高粘度で,操作性などに課題を残した.今回,SA溶液の物性調整を行い,基礎的検討に加え,臨床的に安全性を評価した.【方法】0.4%ヒアルロン酸ナトリウム(sodium hyaluronate:SH)溶液を対照に,0.3~0.8%SA溶液のカテーテル通過性と粘膜隆起能を評価した.次に臨床研究として早期胃癌患者10名を対象に,0.6%SA溶液を用いてESDを施行した.【結果】0.6%SA溶液は0.4%SH溶液と比べ,カテーテル通過性に有意な差は認められなかったが,粘膜隆起能は有意に優れていた.臨床研究では,有害事象は全例に認められなかった.【結論】0.6%SA溶液は粘膜下注入材として安全性が確認され,今後さらに多数例で有効性を検討するに値することが示唆された.