産業医科大学雑誌
Online ISSN : 2759-646X
歯科矯正治療により前歯部の頻回な歯肉出血が改善した後天性von Willebrand症候群の1例
野代 悦生 , 平島 惣一, 宮脇 昭彦, 伊藤 琢磨, 白山 理恵
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2025 年 47 巻 1 号 p. 29-35

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抄録

今回,下顎前歯部歯列不正部の歯肉から頻回に出血した後天的von Willebrand症候群(以下aVWS)患者に対し,抜歯による歯科矯正治療により前歯部の叢生の改善を行い,歯肉出血をコン卜ロールできた症例を経験した.また,矯正治療9年後についても良好な経過である.このような報告は極めて稀と考え報告する.症例は20歲代の女性で,下顎前歯部からの歯肉出血を主訴として来院.その際,現病歴としては,自己免疫性溶血性貧血で鼻出血や月経過多を認める.患者は,歯周治療を行ったが頻回の歯肉腫脹,出血は改善せず,歯列不正による辺縁性歯肉炎の関与が高いと判断した.叢生状態での歯周組織のブラッシングによる改善には限界があること,加えてaVWSがあることにより,歯周組織の改善を図るために叢生を改善することが必要であると考えた.患者は,コントロール下では抜歯も可能であるとのことで,抜歯による歯科矯正治療を行った.歯科矯正治療後,前歯部の叢生が改善され,ブラッシングにより歯垢が取れやすくなったことが炎症の改善につながったと思われ,歯肉からの出血も消失し,現在も薬剤の服用は継続中であるが,良好な経過である.今回我々は,aVWS患者に抜歯と歯科矯正治療により歯列の改善を行い歯肉出血が消失した症例を経験した.その概要を報告し,口腔内出血に対して,全身的要因だけではなく局所的要因も考慮する必要があると考える.

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