産業衛生学雑誌
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年齢別グループによる日本人男性における結腸直腸腺腫性ポリープ発生リスクと血清総コレステロールレベルとの関係
神谷 直紀坂田 徹悟武長 脩行
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2000 年 42 巻 3 号 p. 97-101

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抄録

癌と血清総コレステロール(TC)との関係を研究した論文は欧米にかなり存在し, 中でも結腸直腸癌に言及したものが比較的多いが, 未だに明確な結論には達していない.結腸直腸腺腫性ポリープが結腸直腸癌の前段階であることは広く認められているので, 我々は結腸直腸癌リスクとTCレベルとの関係を明らかにするため, 一製造所における40〜59歳の日本人男性を対象とした結腸直腸腺腫性ポリープリスクと高TCレベルとの関係究明を試みた.免疫学的便潜血反応陽性で全大腸内視鏡検査(TCF)を受け, 腺腫性ポリープ(AD)あるいは正常(C)の確定診断の得られた283名から, 各種検査項目を満足し, かつTCに影響を与える可能性のある疾病ならびに治療中の者を除いた94名を対象とした.対象を40〜49歳, 50〜59歳の二つの年齢階級に分け, それぞれの年齢階級においてAD群とC群間で両側t検定を用い比較検討した.TCF施行前3ヶ月以内のTC(DTC)レベルでは40歳代に有意差が認められた(P<0.001 95%CI 15.79-48.49).50歳代には有意差が認められなかった.データの安定性をみるために, TCF施行3ヶ月前以内と1年3ヶ月前以内に測定されたTC値の2回平均値(BTC)を用いたTCレベルでもやはり40歳代に有意差が認められた(P=0.001 95%CI 10.76-40.87).50歳代には有意差が認められなかった.対象をDTC値により低グループ(〜181mg / dl), 高グループ(209mg / dl〜)に分け, それぞれのグループを各年齢階級ごとにFisherの直説法を用いて検定すると, 40歳代に有意差が認められ(p=0.004), オッズ比は13.75, 95%CI 2.32-81.49であった.50歳代には有意差が認められなかった.TCF施行前3ヶ月以内のLDLコレステロールでも40歳代に有意差が認められ(P<0.001 95%CI 15.22-47.70), LDLコレステロールレベルの高い群に腺腫性ポリープのリスクが高い可能性が示唆された.50歳代には有意差が認められなかった.TCF施行前3ヶ月以内のHDLコレステロール, 中性脂肪, 肥満指数(body mass index)には, 40歳代, 50歳代ともに有意差が認められなかった.結腸直腸腺腫性ポリープのリスクと40歳代における高血清総コレステロールレベル群との間に, 関連性を有する結果が得られたことを示した.従って, 結腸直腸癌においても同様の可能性があると推定される.(産衛誌2000; 42: 97-101)

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