産業衛生学雑誌
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原著
製造業における労働者の対人的援助とソーシャルサポート, 職場ストレッサー,心理的ストレス反応,活気の関連
堀田 裕司大塚 泰正
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2014 年 56 巻 6 号 p. 259-267

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抄録

目的:NIOSH職業性ストレスモデルでは,職場ストレッサーとストレス反応の関係を緩和する要因としてソーシャルサポートが想定されている.しかしながら,職場においてソーシャルサポートを高める方法は,これまでにほとんど検討されていない.本研究の目的は,労働者の対人的援助とソーシャルサポート,職場ストレッサー,心理的ストレス反応,活気の関連について検討することである.対象と方法:製造業労働者240名が,労働者の対人的援助,ソーシャルサポート,職場ストレッサー,心理的ストレス反応,活気に関する調査票に回答した(回収率96.0%).そのうち,回答に欠損のある40名を除いた200名(男性163名,女性37名,平均年齢40.3歳)のデータを最終的な分析対象とした.対人的援助は,日本版組織市民行動尺度によって測定された.職場ストレッサー,心理的ストレス反応,ソーシャルサポート,活気を測定するために,職業性ストレス簡易調査票を使用した.対人的援助,ソーシャルサポート,職場ストレッサー,心理的ストレス反応,活気間の関係を明らかにするために,共分散構造分析を行った.結果:対人的援助は,ソーシャルサポートが高まることを通して,心理的ストレス反応に有意な負の影響を及ぼした.一方,対人的援助は,仕事の量的負担が高まることを通して,心理的ストレス反応に有意な正の影響を及ぼした.これらの2つの効果のうち,後者の効果よりも前者の効果が大きかった.さらに,対人的援助は,ソーシャルサポートが高まることを通して,活気に有意な正の影響を及ぼした.考察:仕事中に他の労働者を手助けする対人的援助は,仕事の量的負担を増加させるため,心理的ストレス反応が高まるが,一方で,対人的援助は,労働者間の信頼感や団結力を強化するため,ソーシャルサポートが高まることで心理的ストレス反応が低下し,活気が高まることが示唆された.ただし,本研究は横断的研究であり,変数間の因果関係までは言及することはできないため,逆の因果関係の存在も否定することはできない.

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© 2014 公益社団法人 日本産業衛生学会
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