産業衛生学雑誌
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原著
仕事中の強度別身体活動および座位行動を評価する簡便な質問紙の開発:職業性身体活動調査票(WPAQ)の妥当性および信頼性
福島 教照 天笠 志保菊池 宏幸高宮 朋子小田切 優子林 俊夫北林 蒔子井上 茂
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2020 年 62 巻 2 号 p. 61-71

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抄録

目的:今日の技術革新に伴い仕事内容の機械化・自動化が進む職場環境では,体を動かさない,長時間座ったままで行う仕事が増えてきている.中高強度の身体活動不足および長時間の座位行動は健康に悪影響を及ぼすことが報告されており,職場におけるそれらの現状を詳細に把握する必要がある.そこで,労働者における座位行動を含む仕事中の身体活動および座位行動のブレイク(継続する座位行動の中断)を評価するための簡便な質問紙「職業性身体活動調査票(Work-related Physical Activity Questionnaire)」(以下WPAQ)を開発した.本研究の目的はWPAQの再検査信頼性と基準関連妥当性を検討することである.方法:フルタイムで働く工場労働者97名(うち女性10名)を対象に質問紙と加速度計による身体活動調査を実施し,その妥当性を検証した.WPAQでは通常の勤務時間およびその時間中の座位時間,立位時間,歩行時間,重労働時間の割合を尋ねた.加えて,座位行動のブレイクを評価するため,座位行動の1回あたりの平均継続時間を尋ねた.また,機縁法により新規に募集した54名に対し,約10日の間隔を空けて同一の質問を繰り返す再検査を実施し,その信頼性を検証した.妥当性は順位相関係数(Spearman’s ρ)を,信頼性は級内相関係数(intraclass correlation coefficients: ICC)および平方重み付けkappa係数(Cohen’s kappa with quadratic weights)を算出し評価した.結果:加速度計データを妥当基準とし,WPAQで評価した強度別の各活動時間との妥当性は,それぞれの強度の身体活動時間との関連において正の相関を示し,重労働時間を除いてすべて有意であった(仕事中の座位時間:ρ=0.69,立位時間:ρ=0.66,歩行時間:ρ=0.39).仕事中の座位行動のブレイク評価において,WPAQで評価した座位行動の1回あたりの平均継続時間は加速度計データとの間に弱いながらも有意な正の相関を認めた(ρ=0.27).再検査信頼性は良好(座位行動を含む身体活動:ICC=0.59–0.79,座位行動のブレイク;Cohen’s kappa with quadratic weights=0.84)であった.結論:本研究で開発したWPAQは,仕事中の強度別身体活動および座位行動の測定,ならびに座位行動のブレイク評価において許容しうる水準の信頼性,妥当性を示した.労働者の健康影響に関連する仕事中の身体活動不足,長時間の座位行動,および継続する座位行動(少ないブレイク)は回避することが困難な職業性曝露と考えられ,その全ての評価を可能とするWPAQは職場の健康増進対策を講じるうえで実用的なツールである.

緒言

多くの労働者は一日のおよそ3分の1の時間を職場で過ごしている1.労働者を取り巻く職場環境において,強度別にみた身体活動として活動強度が3メッツ(metabolic equivalents[METs])以上(中強度以上)に相当する仕事は過去50年間一貫して減少傾向を示している2.その一方で,「座位および臥位におけるエネルギー消費量が1.5メッツ以下のすべての覚醒行動」と定義される座位行動および1.6~2.9メッツに相当する低強度の身体活動で行う仕事が増えてきている2,3.我々も労働者を対象に加速度計を用いた身体活動調査を実施し,ホワイトカラー労働者では仕事中の70%以上の時間を座位行動が占め,職種によらず仕事中の中強度以上の身体活動が占める時間は勤務時間中の5%に過ぎなかったことを報告している4

国際的な身体活動ガイドラインでは,成人は中強度以上の身体活動を週150分以上(または毎日30分以上)実施することが推奨されている5.この推奨値を満たさないことを身体不活動と定義した場合,身体不活動者の割合は世界的に31.1%を占め,身体不活動は総死亡,冠動脈疾患および糖尿病の有病率の増加と関連し,こうした身体不活動は世界の死因の第4位に位置づけられている6,7.もし長時間を費やす仕事中に中強度以上の身体活動が多く含まれていれば身体活動ガイドラインの充足において重要な役割を果たしうるであろう.一方で,身体活動ガイドラインの充足者であっても長時間の座位行動は健康リスクとなり8,仕事中の長時間の座位行動についても,総死亡,糖尿病の罹患の増加と関連することが報告されている9.よって,多くの時間を費やす職場での時間をどのように過ごすかにより労働者の健康影響は異なると考えられ,仕事中における中強度以上の身体活動および座位行動の両方についてそれぞれ評価する必要がある.

疫学調査において妥当性と信頼性が担保された質問紙を用いることは有益な研究方法である9,10.仕事中の中高強度身体活動の評価にあたってはInternational Physical Activity Questionnaire(IPAQ)long version11やGlobal Physical Activity Questionnaire(GPAQ)12など,国際的に妥当性が検証された質問紙がある.しかし,これらの質問紙では座位行動に関して一日全体での時間を尋ねているため,仕事中の座位時間を評価することはできない.松尾らは労働者の座位行動評価を主目的とした「労働者生活行動時間調査票(JNIOSH-WLAQ)」を開発しているが13,その質問紙では仕事中の身体活動を座位と立位/歩行の2種類だけで大別しているため,(身体活動ガイドラインが推奨する)中高強度の身体活動時間を評価することができない.よって,仕事中の座位行動だけでなく強度別の身体活動も測定できる質問紙を開発し,その妥当性と信頼性を検証する意義は大きい.

さらに近年の話題として,長時間継続する座位行動(座りっぱなしの状態)を立ったり歩いたりして中断(ブレイク)することの健康効果が注目されている.ブレイクが多い者では少ない者と比べ,座位時間が同程度であっても腹囲が小さく,血清中性脂肪,食後2時間血糖値が低いなど,健康に好影響を及ぼすことが報告されている14,15.質問紙でブレイクを評価した少数の先行研究があるが16,17,18,身体活動量計との妥当性はSpearman’s ρ=0.06–0.26とバラつきがあり,さらなる研究が必要とされている.

そこで,本研究では,仕事中の座位行動,低強度,中強度,高強度身体活動,および仕事中の座位行動の中断(ブレイク)を評価する質問紙(Work related Physical Activity Questionnaire; WPAQ)を開発し,その妥当性と信頼性を検討することを目的とした.

方法

1. 対象者およびデータ収集

1) 妥当性の検討のための対象者

2014年9月,長野県内の某モーター製造工場に勤務する18~69歳の事務系部門に従事するホワイトカラー労働者および製造系部門に従事するブルーカラーのいずれも含む全従業員152名のうち,育児休暇中の2名を除いた150名にWPAQを含む質問票への回答および加速度計装着を依頼した.研究への同意が得られ,質問票への回答が得られた労働者115名を,妥当性を検討するための対象者とし,引き続き9月末から10月にかけて加速度計による身体活動調査を実施した.工場の全従業員がフルタイム勤務であり,また交替勤務者はいなかった.なお,調査協力者はボランティアとして参加した.除外基準は1)データに欠損がある者,2)後述する有効な加速度計データが取得できなかった者とした.

2) 信頼性の検討のための対象者

信頼性は再検査法によって検討した.工場労働者を対象とする調査は1回だけだったため,2016年7月から2017年2月にかけて新たに東京医科大学内でのポスター掲示および学内外でのチラシ配布等の機縁法により,20歳以上の就労している成人男女を対象者として募集し,同意が得られた者から順次信頼性調査を実施した.1回目の調査票を回収後,改めて再検査のための調査票を約10日間の間隔をあけて配布し,同一の質問に回答することを依頼した.募集にあたり,職種が医学・医療系の教員および研究者に偏らないように事務系職員等の参加が得られるよう配慮した.調査協力者には3,000円分のプリベイドカードを謝礼として各人の調査終了後にそれぞれ提供した.

3) 倫理的配慮

研究参加者には妥当性,信頼性の検討のいずれも事前に研究内容を説明し,書面による同意を得た.本研究は東京医科大学倫理委員会の承認(承認番号SH2790およびSH3396)を得て実施した.

2. 質問紙調査

1) 職業性身体活動調査票:Work related Physical Activity Questionnaire(WPAQ)

WPAQをFig. 1 に示す.質問紙による身体活動評価にあたり2種類の質問方法が考えられる.一つはIPAQやGPAQのように強度別にみた身体活動時間がどれくらいかを直接尋ねる方法(直接法)であり,もう一つはergonomics(人間工学)の分野で用いられてきた,ある一定の時間(例,仕事中など)を尋ねてから,その時間内をある一定の行動(座位行動や立位など)が占める割合を尋ね,それぞれを乗じて時間を算出するといった間接的な質問方法(割合法)である19,20.WPAQでは割合法を主たる質問方法とした(Fig. 1A).加えて,従来の直接法を用いた国際的な身体活動質問紙では勤務中の座位時間の評価ができないため11,12,本研究では直接法により一項目で勤務中の座位時間が評価可能な質問項目も単独で作成し(Fig. 1B),同時に妥当性と信頼性を検証した.WPAQにおける割合法では,最初に仕事の時間(1日あたり何時間何分で回答)を尋ね,次に強度別身体活動時間をそれぞれの行動が仕事中に占める割合(%)を尋ねた(Fig. 1A).このとき座位行動と各強度別の身体活動時間の割合の合計が100%になるように提示した.上記の2つの質問の回答を用いて,仕事時間(分に換算)に座位行動や各強度別の身体活動の割合(%)をそれぞれ乗じることで各活動の時間(分)が算出できる.

Fig. 1.

Work-related Physical Activity Questionnaire (WPAQ)

The WPAQ consists of three components: A) assessments of portion of time spent in intensity-specific physical activity and sedentary behavior, B) direct assessment of occupational sitting time, C) assessment of sedentary breaks. Component B is an optional item of component A. Each component (i.e. A–C) can be used independently or in combination (e.g., combination of A and C or of B and C).

さらに,WPAQでは一度座ってから次に立ち上がるまでの座位行動の平均継続時間(座位バウト)を尋ねる質問があり(Fig. 1C),これによって座位行動の中断(ブレイク)を評価できる.選択肢は「0分」から「80分」までを10分間隔の離散変数(0分,10,20など)として,これに「90分以上」のカテゴリーを加えた合計10段階からもっとも該当すると思う時間を一つ選んで回答する形式とした.

2) 社会人口統計学的要因の評価

性,年齢,身長,体重について質問紙で評価した.Body mass index(BMI: kg/m2)は自己申告の身長,体重から計算した.

3. 加速度計による身体活動調査

3軸加速度計であるActive style Pro HJA-350IT(オムロンヘルスケア社,京都,日本)を用いて,通常の勤務日(平日;月曜日から金曜日)で連続5日間になるように,睡眠および入浴や水泳などの水中に入るときなどを除き,腰部へ装着するように依頼した.加速度信号が60分間以上継続して無信号だった場合を非装着時間と定義した4.加速度計データの採択基準は,1日10時間以上,4日以上の装着記録のある者とし,勤務時間中のデータを本分析の対象とした.加速度計で評価した活動強度が1.5メッツ以下を座位行動,1.6~2.9メッツを低強度身体活動,3.0~5.9メッツを中強度身体活動,6.0メッツ以上を高強度身体活動,(3メッツ以上を中高強度身体活動)と定義した3.Active style Proの活動強度の推定に関する妥当性は確認されている21,22.また,座位行動の継続時間(座位バウト)は1.5メッツ以下の活動強度が持続している状態(時間)とし,座位行動の状態から1.6メッツ以上の活動強度が計測された場合を中断(ブレイク)と定義した.勤務時間帯あたりの総座位行動時間を総ブレイク回数で除して,1回あたりの平均座位バウト時間(分/回)を算出した.さらに,長時間継続する座位行動(座りっぱなし)を評価する目的で,勤務時間帯における30分以上継続する座位時間と30分以上継続する座位時間が勤務時間中の総座位時間に占める割合を算出した.

4. 統計解析

参加者の基本属性について平均と標準偏差,または中央値と25thおよび75thパーセンタイル値を示した.再検査信頼性は比例尺度について級内相関係数(intraclass correlation coefficients: ICC)と95%信頼区間を算出して評価した.ICCの判断は ≥ 0.75:良好,0.40–0.74:中等度,<0.40:不良を目安とした23.順序尺度に関する再検査信頼性の検討は平方重み付けkappa係数(quadratic weighted Cohen’s kappa coefficients)を算出した.Kappa係数の評価はLandis and Kochの基準を参考に,0.81–1.00:ほぼ完全に一致,0.61–0.80:かなり一致,0.41–0.60:まあまあ一致,0.21–0.40:少しは一致,<0.2:わずかに一致を目安とした24.基準関連妥当性はSpearmanの順位相関係数(Spearman’s ρ)を用いた.質問紙と加速度計の各測定値間に対し,加速度計データを妥当基準としたBland-Altman分析にて系統誤差の程度を視覚的に評価した.2つの測定値間の加算誤差の有無を判断するため2つの測定値の差の平均の95%信頼区間を求め,同区間が0を含まない場合に加算誤差が存在すると判定した.比例誤差は,作成したBland-Altman plotについて,回帰式を算出し,回帰係数の有意性の検定により有意と判断された場合,比例誤差が存在すると判定した.本研究における信頼性評価はconvenient sampleを用いた検討であるため,調査対象者の属性を考慮した群分けによる感度分析を行った.本研究の統計解析は,IBM SPSS statistics 24.0 for Windowsを用い,統計的有意水準を両側5%とした.

結果

質問紙に回答し加速度計を装着した115名(応答率76.7%)のうち,回答に欠損があった者(5名),および加速度計の不具合(1名)や有効な加速度計データが得られなかった者(12名)を除外した97名を妥当性検討の最終分析対象者とした.信頼性の評価は,再検査を依頼した54名全員を最終分析対象者として検討した.各対象者の特性をTable 1 に示した.妥当性を評価した対象者は男性が89.7%を占め,平均年齢44±11歳,BMI 22.9±2.9 kg/m2であった.職種はモーター製造に関わるブルーカラー労働者が45人(46.4%),工場長を含む部門管理者5人(5.2%)工学分野の専門職7人(7.2%),技師等20人(20.6%),総務・人事部等の一般事務職11人(11.3%),および営業職等9人(9.3%)のホワイトカラー労働者が52人(53.6%)であった.信頼性を評価した対象者は44.4%が男性で,平均年齢36±12歳,BMI 21.6±3.1 kg/m2 であった.職種は医学・医療系の教員12人(22.2%)および研究者21人(38.9%)で全体の61.1%を占めたが,特に医学・医療系の教員に限定されることはなく,残りは一般事務職員13人(24.1%),会社役員1名(1.9%),およびサービス業従事者等7人(13.0%)であった.信頼性および後述する妥当性評価のいずれにおいても座位行動および各強度別身体活動のそれぞれの割合の合計が100%を超える回答をした者はいなかった.

Table 1. Participant characteristics
Validity assessment
participants
(n = 97)
Reliability assessment
participants
(n = 54)
Sex (male)87 (89.7)24 (44.4)
Age (years)44.4 (11.4)36.3 (12.4)
BMI (kg/m222.9 (2.9)21.6 (3.1)
BMI category
 < 25 kg/m281 (83.5)49 (90.7)
 ≥ 25 kg/m216 (16.5)5 (9.3)
Work status
 Full-time97 (100)41 (75.9)
Occupational categories
 Blue-collar worker
  Crafts and machine assemblers45 (46.4)-
 White-collar worker
  Manager5 (5.2)1 (1.9)
  Professionals
   Engineers7 (7.2)-
   Teachers12 (22.2)
   Researchers21 (38.9)
  Technicians20 (20.6)-
  Office workers (e.g. clerks)11 (11.3)13 (24.1)
  Service and sales workers9 (9.3)7 (13.0)
Daily working time (minutes/day)
 median (25th–75th percentile)480 (465–600)480 (480–540)a
 median (25th–75th percentile)480 (472–555)b

Values are presented as: mean (standard deviation), median (25th–75th percentile) or number (%). BMI: body mass index.

a  First administration results for test-retest reliability

b  Second administration results for test-retest reliability

座位行動および身体活動に関する質問紙の信頼性の分析結果をTable 2 に示した.再テストの間隔の中央値は9日(25thおよび75thパーセンタイル値:8–13日)であった.割合法により算出された座位行動時間および低強度身体活動時間のICCはいずれも0.75以上を示し良好であった.同じく割合法により算出された中強度および高強度身体活動時間のICCはいずれも中等度であった.また,直接法による座位行動時間のICCは中等度であった.座位行動のブレイクに関する質問紙の信頼性は平方重み付けkappa係数が0.84(95%信頼区間[95%CI];0.73–0.95)で“ほぼ完全に一致”であった.感度分析として,対象者の職種により教員・研究者(教員群;n=33)および一般事務職員等(事務職員群;n=21)で群分けし,割合法で評価した各群の強度別身体活動時間のICCを求めた.教員群におけるICCは座位行動時間で0.77(95%CI; 0.52–0.90),低強度身体活動時間で0.66(95%CI; 0.33–0.85),中強度身体活動時間で0.66(95%CI; 0.32–0.85),高強度身体活動時間で0.99(95%CI; 0.98–0.99)であった.事務職員群におけるICCは座位行動時間で0.99(95%CI; 0.96–0.99),低強度身体活動時間で0.91(95%CI; 0.80–0.96),中強度身体活動時間で0.84(95%CI; 0.66–0.93)であった.高強度身体活動時間は非有意であった(ICC; 0.20,95%CI; -0.23-+0.57, p=.18).直接法による座位行動時間については教員群のICCは0.54(95%CI0.24–0.74),事務職員群のICCは0.91(95%CI; 0.79–0.96)であった.座位行動のブレイクについては教員群の平方重み付けkappa係数が0.80(95%信頼区間[95%CI]; 0.62–0.98),事務職員群で0.89(95%CI; 0.79–0.99)であった.

Table 2. Test-retest reliability measured by two different questioning methods in WPAQ (n = 54)
BaselineRetest
Median
(minutes per day)
25th–75th
percentile
Median
(minutes per day)
25th–75th
percentile
ICC95% CIKappa95% CI
Proportional method
 SB352230–432320171–4320.790.66–0.87--
 LPA5723–1587224–1530.750.61–0.85--
 MPA5424–1186026–1110.630.44–0.77--
 VPA00–100–70.590.39–0.74--
Direct method
 SB360240–420360180–4200.710.55–0.82
Sedentary bout3020–603020–60--0.840.73–0.95

WPAQ; Work related Physical Activity Questionnaire, ICC; intraclass correlation coefficient, CI; confidence interval, SB; sedentary behavior, LPA; light-intensity physical activity, MPA; moderate-intensity physical activity, VPA; vigorous-intensity physical activity. Occupational activities were divided into SB, LPA, MPA, and VPA during work time. Time spent in SB during work was measured as sitting, LPA as standing, MPA as walking, and VPA as engaging in heavy labor via self-reported questionnaire. Proportional method was asking their usual working time and the proportion of each occupational activity during the working time. In calculating time spent for each category, the proportion of each occupational activity was multiplied by the total minutes of work. Direct method was asking absolute length in occupational SB time. Sedentary bout was measured as ordinal data and indicated the mean uninterrupted sitting time during worktime.

質問紙と3軸加速度計による妥当性(Spearman’s ρ)の分析結果をTable 3 に示した.加速度計の数値を妥当基準とした場合,割合法によるそれぞれの強度の身体活動時間との関連は正の相関を示し,高強度身体活動を除いてすべて有意であった(座位行動:ρ=0.69,低強度身体活動:ρ=0.66,中強度身体活動:ρ=0.39,中高強度身体活動:ρ=0.44).直接法による座位行動時間との相関はρ=0.65であった.質問紙による座位行動時間および各強度別身体活動時間について,加速度計の数値を妥当基準とした系統誤差をBland-Altmanで検討した結果をFig. 2 に示した.質問紙と加速度計の座位時間の差の平均値は,直接法では加速度計に比べて-41分/日(95%CI; -68 to -14分)過小評価する加算誤差を認めたが,割合法では認めなかった(-14分/日,95%CI; -41 to 13分).各強度別の身体活動は,質問紙が低強度身体活動で-34分/日(95%CI; -52 to -15分)過小評価し,中強度,高強度,中高強度身体活動では過大評価した(中強度;+38分/日[95%CI; +29 to +48分],高強度;+11分/日[95%CI; +5 to +18分],中高強度;50分/日[95%CI; +37 to +62分]).また,すべてにおいて有意な正の比例誤差を認めた(座位時間(割合法)回帰係数(b)=0.80(標準誤差[SE]=0.07),低強度身体活動;b=0.51(0.08),中強度身体活動;b=1.41(0.09),高強度身体活動;b=1.99(0.02),中高強度身体活動;b=1.53(0.06),座位時間(直接法);b=0.77(0.08),all p<.001).

Table 3. Criterion validity of values measured by two different questioning methods in WPAQ compared to accelerometer (n = 97)
AccelerometerProportional methodDirect method
(minutes)Median25th–75th percentileMedian25th–75th percentileSpearman’s ρMedian25th–75th percentileSpearman’s ρ
SB345288–413360150–4720.69**300135–4200.65**
LPA14589–2036324–1890.66**---
MPA1914–284824–900.39**---
VPA00–000–00.12---
MVPA2014–294825–960.44**---
**  p < .01. WPAQ; Work-related Physical Activity Questionnaire, SB; sedentary behavior, LPA; light-intensity physical activity, MPA; moderate-intensity physical activity, VPA; vigorous-intensity physical activity, MVPA; moderate to vigorous physical activity. Time spent in MVPA of WPAQ was calculated as combination with that of MPA and VPA. Accelerometer-measured physical activities were categorized into SB (≤ 1.5 metabolic equivalents [METs]), LPA (1.6–2.9 METs), MPA (3.0-5.9 METs), VPA (≥ 6.0 METs), and MVPA (≥ 3.0 METs). Classification of occupational activities via self-reported questionnaire were same in Table 2.

Fig. 2.

Bland-Altman plots comparing time estimated by the self-reported questionnaires with time measured by accelerometer. The solid lines represent the mean difference in minutes between the self-report measures and the accelerometer data and the dashed lines represent the limits of agreement, which were computed as the mean ± 1.96 standard deviations.

質問紙による座位行動の平均継続時間(座位バウト)評価の妥当性の分析結果をTable 4 に示した.平均的な座位バウト時間(1回の座りっぱなしの時間)が,0~30分以下と回答した者は50名(51.5%),30分以降~60分以下は37名(38.1%)であった.質問紙による平均的な座位バウト時間と加速度計による座位行動の平均座位バウト時間との関連は弱いが有意な正の相関(ρ=0.27)を認めた.また,質問紙で評価した座位バウトと加速度計による一日あたりの30分以上継続する座位時間および30分以上継続する座位時間が総座位時間に占める割合においても同様に有意な正の相関を認めた(それぞれρ=0.28,ρ=0.25).

Table 4. Criterion validity for measuring occupational sedentary bout length compared to accelerometer (n = 97)
Accelerometer aQuestionnaireSpearman’s ρ
Median
(25th–75th percentile)
Median
(25th–75th percentile)
Mean bout length of SB, minutes7 (5–11)30 (30–60)0.27**
Time spent in SB lasting ≥ 30 minutes, minutesb99 (55–183)-0.28**
Proportion of time spent in SB lasting ≥ 30 minutes, % b32 (19–44)-0.25*

*p < .05, **p < .01. SB; sedentary behavior.

a  A sedentary bout was defined as consecutive minutes during which the accelerometer registered less than ≤ 1.5 METs. Mean SB bout length was calculated as length of total SB time divided by total number of sedentary bouts in working time. Time spent in SB lasting ≥ 30 minutes was measured as the length of the accelerometer registered less than ≤ 1.5 METs continued ≥ 30 minutes. Proportion of time spent in SB lasting ≥ 30 minutes was calculated as length of SB bout lasting ≥ 30 minutes divided by length of total SB time in working time.

b  Correlations were calculated against the mean bout length of SB by questionnaire.

考察

本研究では,労働者が仕事中に座位行動,低強度,中強度,高強度身体活動のそれぞれに従事している時間を評価する質問紙(Work related Physical Activity Questionnaire; WPAQ)を作成し,その良好な信頼性と妥当性を確認した.さらに,WPAQでは仕事中の座位行動の平均継続時間(座位バウト)についても評価しており,その優れた信頼性を確認した.また,妥当性はやや劣るものの,これまで開発された座位バウト質問紙に関する先行研究と比較して良好であった.WPAQが評価する各身体活動時間,座位行動時間,座位バウトの各項目はいずれも健康影響との関連が報告されており6,8,14,25,これらを網羅的に測定可能な質問紙の開発は労働者の健康増進対策を進めるうえで有益と考えられる.これまでに長時間の座位行動それ自体が中高強度身体活動を行うこととは独立した総死亡増加の健康リスクとは報告されているが8,近年,毎日60~75分の中強度身体活動を行う場合にはそのリスクが減少する可能性も示されている26.よって,労働者における仕事中の座位行動時間だけでなく中高強度身体活動の評価も重要と考えられるため,両者の評価が可能なWPAQの開発意義は大きいといえる.

仕事中の座位行動の測定にあたり直接法と割合法のそれぞれの結果を検討した.直接法は一項目で仕事中の座位行動を直接評価できるように作成し,その妥当性と信頼性は中等度(Spearman’s ρ=0.65, ICC=0.71)であり,本項目を単独で使用したい場合にはそれが十分可能であると考えられた.割合法による座位行動の評価は,直接法と比較して妥当性および信頼性が軽度だがより高い可能性が示された(WPAQ; Spearman’s ρ=0.69, ICC=0.79).これまでに仕事中の各身体活動を割合で尋ねる間接法と直接法との結果と比較した先行研究は2編あり27,28,いずれも割合法の方が直接法よりも妥当性と信頼性が高いことを報告しており,本研究の結果も先行研究と同様であった.また,Matsuoらは身体活動評価において,多くの労働者は直接法よりも割合法の方が答えやすいと回答したことを報告しており27,WPAQにおいてもその長所が期待できる.

本研究で検討したWPAQ以外にも割合法を用いて職場の中高強度身体活動が評価可能な質問票としてChauらが開発したOccupational Sitting and Physical Activity Questionnaire(OSPAQ)があるが28,その研究対象者は女性や座業で仕事を行っていた者の割合が多く,仕事中の高強度身体活動の評価について十分検討できていなかった(「JNIOSH-WLAQ」も割合法を採用しているが13,中高強度身体活動時間について評価できない).本研究は工場労働者を対象に妥当性の検討を行っており,OSPAQでは評価されていない仕事中の高強度を含む中高強度身体活動についても,WPAQは良好な妥当性(Spearman’s ρ=0.44)を示すことが明らかとなった.今回,Bland-Altman plotにおいて,質問紙は加速度計より中強度身体活動を過大評価する系統誤差を認めた.これについてDyrstadらは質問紙で評価した中高度身体活動時間は女性よりも男性で47%多く過大評価することを報告している29.本研究において妥当性を検証した対象者はほとんど(90%)が男性であったため,中高強度身体活動を過大に報告した可能性が考えられた.

今回,低強度身体活動は良好な信頼性と中等度の妥当性を示した.低強度身体活動は思い出しバイアスの影響を受けやすい活動であり,従来のような直接法からなる質問紙調査で評価することが困難であった30.そのため,低強度身体活動が評価可能で妥当性と信頼性も検証された身体活動質問紙は極めて少ないのが現状であった(「JNIOSH-WLAQ」も低強度身体活動時間について評価できない)13,25.WPAQでは座位行動,低強度,中強度,および高強度身体活動の総和が100%になるように与えられた枠組みの中で回答者が考えて低強度身体活動を評価したことで,低強度身体活動だけを評価する場合よりも想起が容易となり,良好な妥当性や信頼性の指標が得られた可能性が考えられた.そして,勤務中の各強度別身体活動の総和に相当する自己申告による労働時間は企業等が管理する労働時間を基準とした場合に良好な妥当性を示すことが報告されている31

WPAQにおけるブレイクに関する質問の信頼性は良好であり,妥当性(Spearman’s ρ=0.27)は先行研究(Spearman’s ρ=0.06–0.26)と比較して概ね同等かそれ以上の結果を示しており16,17,18,実用に耐えうるものと考えられた.そして,我々の知る限り日本人労働者を対象に妥当性と信頼性が検証された勤務中の座位行動のブレイクが評価可能な質問紙はWPAQのみである.低強度身体活動と同様に座位と立位の姿勢の変化であるブレイクも記憶に残りにくく,質問紙で調査する場合にはどのように尋ねるのかの工夫が必要な項目だった.WPAQでは何分に一回立ち上がるかを尋ね,その回答に選択肢を用意した.その結果,WPAQにおいて良好な信頼性を確認した.

先行研究で用いられる座位行動のブレイクに関する質問紙16,17,18のほとんどが1時間あたりのブレイクの回数を尋ねているが,本研究では平均的な座位バウト時間に着目して質問紙を作成した.近年,30分以上継続する座位行動が糖代謝やメタボリックシンドロームの発症と関連することなどが報告され,健康影響において座位行動のバウト時間を考慮することが重要となってきている32,33.職場における座位行動の介入研究においても,30分ごとに継続している座位行動(座位バウト)を中断することで血糖値の改善効果のみならず肥満の労働者において疲労感や筋骨格系症状の改善効果が示されており32,34,仕事中の座位バウト時間を評価することの意義がより重要となっている.しかし,先行研究のような1時間あたりのブレイクの回数を尋ねる場合,ブレイク1回あたりの継続時間の評価が出来ない(例,1時間あたり2回のブレイクであっても,それらが10分,10分,40分であるのか,またはすべて20分ずつであるのか不明である).よって,仕事中の平均的な座位バウト時間の評価を可能とするWPAQは職場におけるさらなる座位行動対策を講じるうえで有効であると考えらえる.

本研究の限界点として,第一に今回は加速度計で評価したメッツを元に1.5メッツ以下を座位行動と定義している.安静立位の場合,加速度計では1.5メッツ以下を示す場合があり,加速度計による座位行動時間は過大評価された可能性がある.第二の限界点は,本研究の妥当性の対象者は約9割を男性が占める単一の工場に勤める労働者であるため,一般化可能性に課題があることである.しかし,本研究では工場のブルーカラー,ホワイトカラー労働者の両方を含む全従業員を対象に募集し,その高い応答率が得られている.第三の限界点は,本研究の信頼性の対象者は医学・医療系の教員および研究者が過半数を占めているため,同様に一般化可能性に課題がある.ただし,今回の検討において分析対象者の職種について医学・医療系の教員は22.2%に留まり,研究者も特に身体活動研究を専門分野とする者に限定されたわけでもなく,一般事務職員等も一定数含まれていた.そして,教員・研究者と比べて一般事務職員等の方が強度別身体活動における高強度身体活動時間を除いた級内相関係数および座位行動のブレイク評価が良好である可能性が示唆された.

以上のような限界点はあるものの,身体を動かさない,座りすぎの労働者が増えている中2,労働者の健康保持増進のためには,健康と関連する職場における座位行動,身体活動を評価するための信頼できる質問紙の開発が必要である.今回確認された本質問紙の信頼性と妥当性の結果から,WPAQはその実用に資する質問紙であることが示された.

結論

仕事中の座位行動を含む強度別にみた身体活動を評価するための質問紙であるWPAQの妥当性と信頼性を検討し,その良好な信頼性と一定水準以上の妥当性を満たすことが明らかとなった.また,WPAQは仕事中の座位バウトの評価についても同様に有用な質問紙であることを確認した.今後,労働者の座位行動および身体活動対策を講じる上で,WPAQを労働者の現状を把握する簡便なツールとして活用することが期待される.

利益相反

利益相反自己申告:申告すべきものなし

資金提供:本研究はJSPS科研費 若手研究(B)の助成を受けて実施した(研究課題番号25860450).

文献
 
© 2020 公益社団法人 日本産業衛生学会
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