2021 年 63 巻 6 号 p. 323
本誌第63巻第1号に掲載された永滝らの短報1)は,労働環境において空気中インジウムを汎用的な電気加熱原子吸光光度計で分析するもので,誘導結合高周波プラズマ質量分析装置での分析と同等の結果を得たということで,重要な報告である.しかしながら,著者らの報告において示されている図と,本文に述べられた結果の間で齟齬があると思われる.
著者らは同一のフィールドサンプル28検体を電気加熱原子吸光光度計,誘導結合高周波プラズマ質量分析装置で分析した結果,高い相関を得たと述べている.回帰式でy=0.966x,相関係数r=0.974ということであるが,これに相当すると考えられる短報の図3でも回帰直線が示されている.この短報の図3では回帰直線はほぼグリッドの交点を交差しており,ほぼ傾きは1に近い.これは回帰式の傾きが0.966であることに矛盾しているように思われる.図の精度はそれほど高くなくとも,この傾きは十分区別できるはずである.例として,同じグリッドで傾き1と0.966の直線を図1に示す.
傾き1と0.966の直線の例
実線 傾き1,破線 傾き0.966
結論はほとんど変わらないと思われるが,このプロットについて再度確認することを著者らに勧めたい.
利益相反自己申告:申告すべきものなし