2022 年 64 巻 2 号 p. 96-106
目的:企業外労働衛生機関の産業看護職は,中小企業にむけたメンタルヘルス一次予防のための質の高い保健活動の提供が期待されている.企業外労働衛生機関の産業看護職が,メンタルヘルス一次予防のための保健活動を実践するためには,事業場側だけでなく所属機関の支援体制を構築する実践能力が必要である.本研究では,企業外労働衛生機関の産業看護職におけるメンタルヘルス一次予防の実践能力を自己評価する尺度を開発することを目的とした.対象と方法:質的先行研究と文献検討に基づき,企業外労働衛生機関の産業看護職におけるメンタルヘルス一次予防の実践能力尺度の原案を作成した.111施設の産業看護職555人を対象に質問紙調査を実施し,妥当性と信頼性を検証した.結果:169人を分析対象とし,最尤法・プロマックス回転を用い探索的因子分析を行い,【事業場の方針やニーズに合わせた一連の保健活動を展開する能力】【事業場との連携を強化する能力】【所属機関の保健活動基盤を整備する能力】【労働者の支援ニーズを引きだす能力】の4因子26項目となった.さらに,確認的因子分析により4項目を削除し,モデル適合度指数は,GFI=.874,AGFI=.838,CFI=.962,RMSEA=.050で,4因子22項目となった.考察と結論:開発した尺度は,メンタルヘルス一次予防の企業外労働衛生機関産業看護職の実践能力評価尺度として一定の信頼性・妥当性を有すると考えられた.企業外労働衛生機関の産業看護職が日々の活動を見直す自己評価ツールとして活用可能である.