産業衛生学雑誌
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原著
がん対策推進企業アクション実態調査における,推進パートナーの職域での5がん検診受診率と,受診率に関係した取組みに関する報告
南谷 優成 向井 智哉立道 昌幸片野 厚人福吉 潤中川 恵一
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2023 年 65 巻 5 号 p. 231-247

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抄録

目的:職域でのがん検診受診率向上に繋がる対策には,エビデンスが乏しいものが多い.がん対策推進企業アクションの実態調査から,企業・団体で行われている対策中で有効性が高いものを明らかにすることが目的である.対象と方法:2021年度推進パートナー企業・団体への実態調査に回答した企業・団体を対象とした.5がん(胃がん,肺がん,大腸がん,乳がん,子宮頸がん)検診受診率とがん検診推進の取組みに関してウェブ上で回答を得た.取組みによって非階層的クラスター分析を行い,群毎の5がん検診受診率を分散分析によって比較した.さらに胃がん/肺がん/大腸がんと乳がん/子宮頸がんの2つの各平均受診率を従属変数,各取組みの実施を独立変数,企業・団体の規模と業種を統制変数とした重回帰分析を行った.結果:704企業・団体より回答を得た.クラスター分析によって分類された3群を,積極群,中庸群,消極群と定義した.すべてのがん検診で,群の主効果は有意であり,多重比較から,積極群と消極群(ts > 3.30, ps < .01, Hedges’ ds > 0.73),中庸群と消極群(ts > 3.70, ps < .01, Hedges’ ds > 0.88)の差は有意であった.肺がん以外の4がんでは積極群と中庸群の差は有意でなく(ts < 0.21, ps < .84, Hedges’ ds < 0.02),肺がんでは有意であったが効果量はわずかだった.重回帰分析より胃がん/肺がん/大腸がんでは,「大腸がん検査キットの全対象者への配布(β = 0.14)」が,乳がん/子宮頸がんでは「企業・団体実施のがん検診費用補助(β = 0.24」,「就労扱いでの検診受診(β = 0.18)」,「受診時の女性受診者への配慮(β = 0.17)」がそれぞれの平均受診率への効果が有意であった.考察と推論:企業・団体における,がん検診受診率に関係した,がん検診推進の取組みが抽出された.これらの取組みを受診率が低い企業・団体に実践してもらえば,受診率向上に結びつく可能性がある.

Abstract

Objectives: Most cancer control measures in the workplace have limited supporting evidence. This study aimed to identify highly effective cancer control measures, based on a survey by the Corporate Action to Promote Cancer Control. Methods: The firms and organizations that responded to the web survey were included. The questionnaire comprised five cancer (stomach, lung, colorectal, breast, and cervical) screening rates and their countermeasures to promote cancer control. We conducted a non-hierarchical cluster analysis according to the degree of the measures and compared the screening rates among each group using an analysis of variance. Then, we performed two multiple regression analyses with the mean screening rates for stomach/lung/colorectal cancer and breast/cervical cancer as dependent variables, the implementation of each countermeasure as an independent variable, and the size and industry as control variables. Results: We obtained responses from 704 firms and organizations. The three groups classified by cluster analysis were defined as active, moderate, and negative. For all cancer screenings, the main effects were significant, and multiple comparisons revealed that the difference between the active and negative groups (ts > 3.30, ps < .01, Hedges’ ds > 0.73) and the moderate and negative groups (ts > 3.70, ps < .01, Hedges’ ds > 0.88) were significant. For the four cancers other than lung, the difference between the active and moderate groups was not significant (ts < 0.21, ps < .84, Hedges’ ds < 0.02), and for lung, the difference was significant, but the effect size was small. The multiple regression analyses revealed that “distribution of colorectal cancer test kits to all subjects” (β = 0.14) was significant for stomach, lung, and colorectal cancer, while “financial supports for cancer screening” (β = 0.24), “screening as part of employment” (β = 0.18), and “careful screening of female subjects” (β = 0.17) were significant for breast and cervical cancer, respectively. Conclusions: We identified effective countermeasures for cancer control in the workplace, and these measures will help increase cancer screening rates.

1. はじめに

日本では2006年に承認され,2016年に改正されたがん対策基本法,2018年閣議決定された第3期がん対策推進基本計画に基づいてがん対策が行われている1.第3期がん対策推進基本計画では,全体目標としての「がん患者を含めた国民が,がんを知り,がんの克服を目指す.」の下に,3本柱として「がん予防」,「がん医療の充実」,「がんとの共生」が掲げられている1.「がん予防」の中のがん検診に関して,厚生労働省や国立がん研究センターは,がん死亡を確実に減らすことができる検診として,胃がん,肺がん,大腸がん,乳がん,子宮頸がんの5がんに対する検診を推奨している2.現在にいたるまで目標として設定した受診率50%の達成はできていない1,3.2018年には,厚生労働省から職域におけるがん検診に関するマニュアルが発表された4.がん検診受診者の約3–6割が職域での受診との報告もあり,職域におけるがん検診は,国民にがん検診の受診機会を提供するものとして重要である4.同マニュアルにおいて,職域におけるがん検診の実施での推奨事項として検診の種類や精度管理,がん予防の促進や産業医/検診実施機関との連携,がんに関する知識の普及啓発などが解説されている.厚生労働省は,2019年に受診率向上施策ハンドブックを発行し,ナッジ理論の利用などを紹介している5,6

米国疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention: CDC)からは,科学的根拠をもつ受診率向上に向けた取組みが報告されている7.検診受診対象者への介入としては,書面や電話によるリマインダー,受診手段提供や受診時間の調整などによるアクセス向上,パンフレットやニュースレターの使用,1対1またはグループ教育などがあり,検診機関/医療機関への介入としてはリマインダーとフィードバックが挙げられる7,8.職域でのがん検診受診率向上の取組みとしては,職場でのがん検診に関する教育や,受診へのアクセス向上,リマインダー,インセンティブの提供などが提唱されている9,10

がん対策推進企業アクション(がん対策推進企業等連携事業,以下企業アクション)は,2009年度に始まり2022年現在まで継続されている,職域におけるがん対策の改善を目指した厚生労働省の委託事業である11,12.企業・団体ともにがん検診受診率の50%以上への引き上げと,がんになっても働き続けられる社会の構築を目座して,「大人へのがん教育」を職域の場で提供している.登録には費用はかからず,登録された企業・団体は,パンフレットや書籍,e-Learningによる正しいがん情報の提供や,がん専門医やがん経験者によるがん教育講座,社内教育用の説明資料の提供などを受け,職域でのがん教育の充実に役立てることができる.2022年6月現在2,058社が推進パートナー企業・団体(以下,推進パートナー)として登録し,その従業員規模は6,840,816人となる.現在も毎年300–500社程度が新規に登録している.毎年度末には,推進パートナーの現状について把握し,今後の企業アクション事業の取組みの参考とするため「がん検診受診率の現状調査,がん検診推進の取組み,及びがん患者の就労支援の実態調査」を実施している.

日本国内の企業では,がん検診受診率向上のため様々な取組みが行われているが,エビデンスに乏しいものも多い.本研究では,2021年度の企業アクションの実態調査の結果を受け,企業ごとに検診受診率向上のために行われている様々な取組みの中から,5がん検診受診率向上につながる有効な取組みを見つけることを目標とする.今後見つかった有効な取組みを推進パートナーに提案,実行していただくことで,効果検証を行うことも可能である.将来の職域でのがん対策の改善につながると考え本研究を企画した.

2. 研究方法

(1) 調査方法

企業アクションでは毎年度末に,推進パートナーに対して「がん検診受診率の現状調査,がん検診推進の取組み,及びがん患者の就労支援の実態調査」を実施している.推進パートナーに対して企業アクション事務局より,調査依頼のメールが全推進パートナーの担当者宛てに送付される.担当者は調査の概要と回答内容の利用目的を確認し,web上での入力をもって,調査への同意とみなされた.回答した企業は,報酬として,集計結果をもとに企業ごとに作成された「アドバイスレポート」を後日受け取ることができ,さらに回答内容によっては「厚生労働大臣表彰」や「がん対策優良企業表彰」の選出を受ける権利を得ることができた.調査期間は1か月程度であり,調査終了前に回答率の向上のため事務局より非回答の推進パートナーに対して,入力のリマインダーを行った.

(2) 調査内容

調査票は,先行研究で提唱されている職域でのがん検診に有効な取組みや,前年度以前の実態調査の調査票の内容をもとに作成された.本論文での解析に使用した設問は,すべての推進パートナーに対して同じ設問(下記(a)–(c))であったが,就労支援における設問(下記(d))においては一部企業・団体の属性(一般企業or健康保険組合)によって設問が異なっていた.

(a) 属性

基本属性として,推進パートナーの業種,従業員数,昨年度調査の回答歴を尋ねた.

(b) がん検診受診率の現状調査

被雇用者の5がん(胃がん,肺がん,大腸がん,乳がん,子宮頸がん)検診の直近年度の受診率を尋ねた.

(c) がん検診推進の取組み

以下全ての取組みに関して,今年度の推進パートナーにおける実施の有無を選択式で尋ねた.

①費用負担:企業・団体実施のがん検診費用補助/検査機関までの交通費補助/費用の給与からの天引き/自治体実施のがん検診受診費用補助

②受診日時:予めの受診日時決定/受診者希望による日時決定/就労扱いでの検診受診/特別休暇での検診受診

③受診場所:職場での一斉検診/受診者希望による医療機関決定

④検診受診:受診者希望の検診項目選定/検診によるメリットとデメリットなどの説明資料の準備/国推奨の検診内容での実施推奨/健康診断とがん検診の同時受診体制の構築/受診時の女性受診者への配慮/大腸がん検査キットの全対象者への配布

⑤受診勧奨:受診対象者への連絡/未受診者へのリマインダー/管理職に対する通知

⑥啓発:がんに対する情報発信やがん検診の推進/ポスター掲示やセミナーの実施/企業アクション発行書籍の推奨/企業アクション作成e-Learningの導入

⑦検診結果把握:受診状況把握/検診結果把握への同意取得/精密検査受診状況把握/精密検査結果把握への同意取得/要精密検査対象者への受診勧奨/精密検査費用補助

⑧経営層・管理職:安全衛生委員会で議題として取り上げ,受診勧奨するよう管理職へ通知/各事業所のトップが集まる会議や健康管理推進委員会等で,事業所別の受診率明示/保健事業推進委員会等の専門委員会の設置

⑨被扶養者の受診:被扶養者の受診率把握/被扶養者への受診勧奨/被扶養者への検診案内郵送/被扶養者検診費用補助

(d) 就労支援の実態調査・その他

両立支援制度の有無,産業医との連携,医療機関との連携等の選択式の回答に加え,自由記述としてがん対策での課題や企業独自の取組みを尋ねた.

(3) 研究対象者

本研究は企業・団体における,がん検診推進の取組みが5がん検診受診率向上に結びつくかを明らかにするための研究であり,推進パートナーの中で調査に回答したすべての企業・団体を解析対象とした.

(4) 解析方法

企業アクションに登録している全推進パートナーと回答した推進パートナーの特性を記し,5がん検診受診率と受診率向上に向けた36の取組みの実施率を記述統計として記載した.なお各企業・団体の従業員数が大きく異なり,単純平均は結果を大きくゆがませる可能性があるため,各企業・団体の従業員数で調整した加重平均も併記した.さらに取組みと受診率の関係性を多側面から検討するために,以下2つの分析を行った.

第一に,企業・団体に着目した分析を行った.具体的には,各企業・団体がそれぞれの取組みを行っている場合には1,行っていない場合には0を与えて作成された36のダミー値を用いて非階層的クラスター(k-means法)を行い,3つのクラスターを抽出した.その上で,各クラスター間で受診率に差があるかを分散分析・多重比較を行った.有意水準はHolm法で調整した.得られたデータのうち受診率にはそもそも企業・団体が受診率を把握していないなどの理由によって欠損値が多く含まれたため,リストワイズで除外を行った場合には分析に耐えるサンプルサイズが確保できなかった.そのため,ペアワイズでの除外を行った.したがって,結果のサンプルサイズは分析ごとに異なる.なお,本研究の主な関心事項ではないが,そもそも受診率を把握している企業としていない企業では取組みの有無や業種,従業員数等に差が見られる可能性がある.そして,この点を把握しておくことは今後の働きかけにとっての予備的資料となることが期待できる.そこで受診把握の有無を従属変数とした重回帰分析の結果をAppendix 1に示した.

第二に,取組みに着目した分析を行った.具体的には,男性・女性双方に推奨されている胃がん,肺がん,大腸がんの平均受診率と女性のみに推奨される乳がん,子宮頸がんの平均受診率を従属変数,各取組みの実施を独立変数,企業・団体の規模と業種を統制変数とした重回帰分析を行った(ただし,がん種ごとの分析も有益と思われるため,その結果をAppendix 2に示した.).なお,その際,該当のがん検診受診率のいずれかを回答していない企業・団体は欠損値として扱い,解析からは除外した.

解析にはR ver. 4.2.0を用い,統計的有意水準は5%とした.ただし,分散分析についてのみHAD ver. 16.0を用いた13

(5) 倫理的配慮

推進パートナーに対しては,調査依頼時に回答が匿名化の上,解析に利用されること,回答をもって調査の同意とみなすことを説明した.本研究の報告にあたり,東海大学医学部倫理審査委員会の承認(22R046)を得た.

3. 研究結果

調査は2021年12月16日から2022年1月13日にかけて実施され,1,836社に調査の連絡を行い,2022年1月6日に回答がない1,563社に対してリマインダーを行い,合計704社(34.2%)から回答を得た.全サンプルおよび後述のクラスターごとの記述統計量をTable 1 に記した.解析対象は,20名以下の小規模な企業が159社(23%),1,000名以上の大規模企業が200社(28%)を占めており,健康保険組合が142団体(20%)含まれていた.5がん検診受診率の回答数はいずれも50%程度であった.

Table 1. 対象企業・団体の特徴と5がん検診受診率の回答数
全体積極群中庸群消極群
Nnnn
全体704241327136
人数規模
0~20名15922.6%187.5%9529.1%4633.8%
21~100名15822.4%3012.4%8526.0%4331.6%
101~1,000名18726.6%7229.9%8124.8%3425.0%
1,001~5,000名11316.1%6627.4%3911.9%85.9%
5,001名以上8712.4%5522.8%278.3%53.7%
業種
健康保険組合14220.2%7631.5%5516.8%118.1%
農林漁業a40.6%00.0%41.2%00.0%
建設業426.0%104.1%237.0%96.6%
製造業13118.6%5121.2%5316.2%2719.9%
情報通信業659.2%114.6%3711.3%1712.5%
運輸郵便業213.0%83.3%82.4%53.7%
卸売業・小売業618.7%218.7%288.6%128.8%
不動産物品賃貸業a71.0%31.2%20.6%21.5%
宿泊飲食サービスa10.1%00.0%10.3%00.0%
医療福祉業486.8%218.7%195.8%85.9%
教育学習支援業a40.6%00.0%30.9%10.7%
生活関連サービス業娯楽業334.7%62.5%195.8%85.9%
学術研究専門技術サービス152.1%52.1%82.4%21.5%
その他サービス業12017.0%2912.0%6219.0%2921.3%
その他101.4%00.0%51.5%53.7%
がん検診受診率回答数
胃がん36752.1%18476.3%16550.5%1813.2%
肺がん35250.0%18476.3%15447.1%1410.3%
大腸がん36752.1%18677.2%16349.8%1813.2%
乳がん33747.9%17271.4%14444.0%2115.4%
子宮頸がん33147.0%16869.7%14042.8%2316.9%
a  重回帰分析で「その他」に合併された業種を示す.

解析対象の5がん検診の被雇用者の受診率をFigure 1 に記した.受診率は単純平均,加重平均とも肺がんが最も高く(単純平均79.8%,95%信頼区間[76.3, 83.2] / 加重平均75.4%,95%信頼区間[72.0, 78.9]),大腸がん(70.9% [67.8, 74.0] / 65.4% [62.3, 68.6]),胃がん(64.9% [61.6, 68.1] / 51.4% [48.2, 54.7]),乳がん(56.8% [53.2, 60.4] / 43.7% [40.1, 47.3]),子宮頸がん(50.0% [46.3, 53.7]/ 35.5% [31.8, 39.2])が続いた.

Figure 1.

5がん検診受診率の比較

注)グラフに付されたエラーバーは平均値の95%信頼区間を示す

がん検診推進の取組みの一覧を,全体,企業(100名以下/101名以上),健康保険組合に分けてTable 2 に記した.全体で最も広く行われている取組みは企業・団体実施のがん検診費用補助(全体74.9%/100名以下企業60.9%/100名以上企業82.3%/健康保険組合90.8%)であり,受診対象者への連絡(67.0%/58.3%/71.5%/77.5%),受診者希望による医療機関決定(60.5%/53.6%/61.2%/73.9%)が続いた.

Table 2. がん検診推進の取組みの実施率(全体/従業員100名以下の企業/従業員100名以上の企業/健康保険組合)
取組みの内容全体企業健康保険組合
1~100名101名以上
(N = 704)(n = 302)(n = 260)(n = 142)
①費用負担
企業・団体実施のがん検診費用補助74.9%60.9%82.3%90.8%
検査機関までの交通費補助16.3%13.2%23.8%9.2%
費用の給与からの天引き10.4%7.9%14.2%8.5%
自治体実施のがん検診受診費用補助15.5%9.9%11.2%35.2%
②受診日時
予めの受診日時決定28.6%21.9%34.2%32.4%
受診者希望による日時決定58.9%48.0%64.6%71.8%
就労扱いでの検診受診35.5%29.5%45.8%29.6%
特別休暇での検診受診3.1%2.0%4.6%2.8%
③受診場所
職場での一斉検診33.1%15.6%46.2%46.5%
受診者希望による医療機関決定60.5%53.6%61.2%73.9%
④検診受診
受診者希望の検診項目選定55.8%44.4%62.7%67.6%
検診によるメリットとデメリットなどの説明資料の準備15.5%8.9%25.0%12.0%
国推奨の検診内容での実施推奨37.4%29.1%48.1%35.2%
健康診断とがん検診の同時受診体制の構築46.3%32.1%53.5%63.4%
受診時の女性受診者への配慮24.3%12.6%34.2%31.0%
大腸がん検査キットの全対象者への配布23.6%15.6%30.8%27.5%
⑤受診勧奨
受診対象者への連絡67.0%58.3%71.5%77.5%
未受診者へのリマインダー35.4%24.8%46.9%36.6%
管理職に対する通知21.0%15.9%30.8%14.1%
⑥啓発
がんに対する情報発信やがん検診の推進27.4%16.2%41.2%26.1%
ポスター掲示やセミナーの実施59.4%51.7%65.0%65.5%
企業アクション発行書籍の推奨35.5%36.8%39.6%25.4%
企業アクション作成e-Learningの導入8.9%5.3%15.4%4.9%
⑦検診結果把握
受診状況把握51.8%40.1%59.2%63.4%
健診結果把握への同意取得43.6%29.1%51.5%59.9%
精密検査受診状況把握28.0%18.2%38.8%28.9%
精密検査結果把握への同意取得22.0%13.2%30.0%26.1%
要精密検査対象者への受診勧奨40.2%26.2%56.5%40.1%
精密検査費用補助11.2%7.9%10.8%19.0%
⑧経営層・管理職
受診勧奨するよう管理職へ通知35.9%32.8%49.2%18.3%
事業所別の受診率明示16.8%14.2%20.0%16.2%
専門委員会の設置13.4%2.3%14.6%34.5%
⑨被扶養者の受診
被扶養者の受診率把握22.0%8.9%16.9%59.2%
被扶養者への受診勧奨36.4%26.8%30.8%66.9%
被扶養者への検診案内郵送25.4%5.6%27.3%64.1%
被扶養者検診費用補助35.8%10.3%41.5%79.6%

次に,各企業・団体のがん検診推進の取組みへの回答を用いて,クラスター分析を行った.クラスター数2から順に増やして4まで設定し,各結果の解釈可能性を検討した結果,クラスター数を3とした場合の結果が最も容易であった.そこでクラスター数3で分析を行ったところ,Figure 2 に示される通り,第一クラスターに分類される企業・団体は各取組みを行う割合が高く(平均取組み数M = 19.71, SD = 4.27),第二クラスターは中程度で(M = 10.13, SD = 2.68),第三クラスターはその割合が低かった(M = 1.65, SD = 2.17).それぞれ「積極群」,「中庸群」,「消極群」と定義した.各クラスターに含まれる企業・団体数は,積極群が241社,中庸群が327社,消極群が136社であった.各群の背景をTable 1 に記載した.

Figure 2.

クラスター分析による3群毎のがん検診推進の取組みの比較

次に,それぞれの群間でがん検診受診率に差があるかを検討した.まず,3群間におけるがん検診受診率をFigure 3 に図示した.1要因3水準の分散分析を繰り返した結果,すべてのがん検診において,群の主効果は有意であり,3群間には差があると考えられた(Fs > 4.67, ps < .01, ηp2s > 0.03).3群の中でどの群間に差があるか明らかにするために行った多重比較から,胃がん,大腸がん,乳がん,子宮頸がんの4種は,積極群と消極群(ts > 3.30, ps < .01, Hedges’ ds > 0.73)および中庸群と消極群(ts > 3.70, ps < .01, Hedges’ ds > 0.88)の差は有意であったのに対し,積極群と中庸群の差は有意ではなかった(ts < 0.21, ps < .84, Hedges’ ds < 0.02).他方で,肺がんは,積極群と消極群(t = 5.00, p < .01, Hedges’ d = 1.38),中庸群と消極群(t = 3.90, p < .01, Hedges’ d = 1.08)の差が有意であったことに加えて,積極群と中庸群の差も有意であった(t = 2.72, p = .01).ただし,その効果量はd = 0.30と小さかった.まとめると,5がん検診受診率において積極群と中庸群の差の効果量はHedges’ ds < 0.30とほとんど差はないが,中庸群と消極群の差の効果量はHedges’ ds > 0.88と非常に大きなものであることが示された.

Figure 3.

クラスター分析による3群毎の5がん検診受診率の比較

注)各グラフの下に付記した群の数字は,対象のがん検診受診率を回答した企業・団体数を表す.また,図中に付されるエラーバーは平均値の95%信頼区間を示す.**p < .01, *p < .05.

続いて,胃がん,肺がん,大腸がんの平均受診率と乳がん,子宮頸がんの平均受診率を従属変数,各取組みの実施を独立変数,企業・団体の規模と業種を統制変数とした重回帰分析を行った.該当のがん検診受診率のいずれかを回答していない企業・団体が除外され(胃がん,肺がん,大腸がん:387社(55.0%),乳がん,子宮頸がん:386社(54.8%)),それぞれ317社,318社が解析に利用された.その結果,Table 3 に示される通り,胃がん,肺がん,大腸がんについては,大腸がん検査キットの全対象者への配布の効果が有意であり(偏回帰係数B = 9.88, 標準化偏回帰係数 β = 0.14, 95%CI [0.03, 0.26]),平均受診率に関係していると考えられた.対して,乳がん,子宮頸がんについては,企業・団体実施のがん検診費用補助(B = 18.38, β = 0.24, 95%CI [0.08, 0.40]),就労扱いでの検診受診(B = 12.20, β = 0.18, 95%CI [0.05, 0.30]),受診時の女性受診者への配慮(B = 12.96, β = 0.17, 95%CI [0.06, 0.28])の3つの取組みの有意な効果が見られた.両モデルの決定係数および調整済み決定係数はそれぞれR2 = 0.27, 0.32,adj. R2 = 0.14, 0.20であった.なお,両モデルのVIF(Variance of Inflation Factor)を算出したところ,その値が最大のものでも3.71であっため,上記の結果は多重共線性によって影響されたものではないと判断できた.

Table 3. 各がんの検診受診率を従属変数とした重回帰分析
取組みの内容胃がん,肺がん,大腸がん(n = 317)乳がん,子宮頸がん(n = 318)
BS.E.pβ95%CIBS.E.pβ95%CI
①費用負担
企業・団体実施のがん検診費用補助9.195.730.110.14[-0.03,0.31]18.386.110.00**0.24[ 0.08,0.40]
検査機関までの交通費補助
/費用の給与からの天引き
5.504.330.210.07[-0.04,0.18]-1.804.750.70-0.02[-0.13,0.08]
費用の給与からの天引き-7.415.290.16-0.08[-0.19,0.03]-8.755.920.14-0.08[-0.19,0.03]
自治体実施のがん検診受診費用補助8.444.500.060.11[-0.01,0.22]-0.934.830.85-0.01[-0.11,0.09]
②受診日時
予めの受診日時決定7.764.050.060.12[ 0.00,0.25]0.834.540.860.01[-0.11,0.13]
受診者希望による日時決定0.594.740.900.01[-0.15,0.17]3.695.380.490.06[-0.10,0.21]
就労扱いでの検診受診0.513.860.900.01[-0.12,0.13]12.204.290.00**0.18[ 0.05,0.30]
特別休暇での検診受診-8.778.420.30-0.05[-0.15,0.05]-7.738.880.39-0.04[-0.13,0.05]
③受診場所
職場での一斉検診0.384.460.930.01[-0.14,0.15]-5.644.990.26-0.08[-0.22,0.06]
受診者希望による医療機関決定1.104.320.800.02[-0.12,0.16]-0.955.050.85-0.01[-0.16,0.13]
④検診受診
受診者希望の検診項目選定-4.023.850.30-0.07[-0.20,0.06]3.334.220.430.05[-0.08,0.18]
説明資料の準備-7.474.880.13-0.09[-0.21,0.03]-3.095.140.55-0.03[-0.15,0.08]
国推奨の検診内容での実施推奨7.413.860.060.12[ 0.00,0.25]-4.534.350.30-0.07[-0.19,0.06]
健康診断とがん検診の同時受診体制の構築1.874.060.640.03[-0.11,0.17]-0.354.570.94-0.01[-0.14,0.13]
受診時の女性受診者への配慮0.713.770.850.01[-0.10,0.12]12.964.180.00**0.17[ 0.06,0.28]
大腸がん検査キットの全対象者への配布9.883.860.01*0.14[ 0.03,0.26]-4.894.350.26-0.06[-0.17,0.05]
⑤受診勧奨
受診対象者への連絡2.724.650.560.04[-0.10,0.19]-4.615.300.39-0.07[-0.22,0.08]
未受診者へのリマインダー0.243.720.950.00[-0.12,0.13]6.214.090.130.09[-0.03,0.21]
管理職に対する通知-2.384.300.58-0.03[-0.15,0.09]0.834.490.850.01[-0.10,0.12]
⑥啓発
がんに対する情報発信やがん検診の推進2.584.150.530.04[-0.09,0.17]-2.884.780.55-0.04[-0.17,0.09]
ポスター掲示やセミナーの実施-1.943.860.61-0.03[-0.16,0.10]-5.304.390.23-0.08[-0.21,0.05]
企業アクション発行書籍の推奨3.633.480.300.06[-0.05,0.17]4.293.910.270.06[-0.05,0.17]
企業アクション作成e-Learningの導入0.934.960.850.01[-0.09,0.11]3.825.630.500.03[-0.06,0.13]
⑦検診結果把握
受診状況把握7.404.540.100.13[-0.03,0.28]0.535.050.920.01[-0.14,0.16]
健診結果把握への同意取得-1.104.390.80-0.02[-0.17,0.13]-3.994.790.41-0.06[-0.20,0.08]
精密検査受診状況把握-0.194.910.970.00[-0.15,0.15]0.405.650.940.01[-0.15,0.16]
精密検査結果把握への同意取得-0.415.300.94-0.01[-0.16,0.14]3.715.890.530.05[-0.10,0.19]
要精密検査対象者への受診勧奨5.863.960.140.10[-0.03,0.23]1.674.050.680.02[-0.09,0.14]
精密検査費用補助1.614.840.740.02[-0.09,0.12]10.375.490.060.10[ 0.00,0.20]
⑧経営層・管理職
受診勧奨するよう管理職へ通知1.253.990.750.02[-0.11,0.15]-0.084.370.990.00[-0.13,0.12]
事業所別の受診率明示-0.374.180.930.00[-0.11,0.10]-8.174.610.08-0.09[-0.20,0.01]
専門委員会の設置2.024.790.670.02[-0.09,0.13]-6.015.220.25-0.06[-0.17,0.04]
⑨被扶養者の受診
被扶養者の受診率把握-2.984.730.53-0.04[-0.18,0.09]-4.115.380.45-0.05[-0.19,0.08]
被扶養者への受診勧奨-0.513.920.90-0.01[-0.14,0.12]5.664.390.200.08[-0.04,0.21]
被扶養者への検診案内郵送1.745.180.740.03[-0.13,0.18]4.965.660.380.07[-0.08,0.21]
被扶養者検診費用補助-8.334.690.08-0.14[-0.29,0.02]4.515.170.380.07[-0.08,0.21]
企業・団体規模
20名以下(ref.)
21~100名7.525.610.180.11[-0.05,0.27]3.765.930.530.05[-0.10,0.20]
101~1,000名6.835.950.250.10[-0.07,0.28]-7.546.610.25-0.10[-0.28,0.07]
1,001~5,000名8.087.160.260.10[-0.08,0.28]1.907.850.810.02[-0.15,0.19]
5,001名以上1.617.240.820.02[-0.14,0.18]-8.498.390.31-0.09[-0.25,0.08]
業種
健康保険組合(ref.)
建設業1.228.170.880.01[-0.12,0.14]27.7310.490.01**0.20[ 0.05,0.35]
製造業-3.826.030.53-0.05[-0.21,0.11]17.926.820.01**0.21[ 0.05,0.37]
情報通信業6.238.050.440.06[-0.10,0.22]20.728.770.02*0.18[ 0.03,0.33]
運輸郵便業-0.2911.270.980.00[-0.13,0.13]5.2912.180.660.03[-0.10,0.15]
卸売業・小売業10.867.910.170.11[-0.05,0.26]19.138.590.03*0.16[ 0.02,0.31]
医療福祉業-2.838.280.73-0.02[-0.17,0.12]11.149.380.240.09[-0.06,0.23]
生活関連サービス業娯楽業18.438.670.03*0.13[ 0.01,0.26]10.4110.370.320.07[-0.06,0.20]
学術研究専門技術サービス15.5111.680.190.08[-0.04,0.19]39.3412.810.00**0.17[ 0.06,0.28]
その他サービス業2.107.130.770.03[-0.16,0.21]26.567.990.00**0.30[ 0.12,0.48]
その他1.3610.380.900.01[-0.12,0.14]19.9813.340.140.11[-0.04,0.27]

B:偏回帰係数,β:標準化偏回帰係数,**p < .01, *p < .05.

4. 考察

本研究ではがん対策推進企業アクションによる推進パートナー調査の結果から,企業におけるがん検診の受診率とがん検診推進の取組みの有無,さらにこれらからがん検診受診と関連のある取組みを導いた結果を報告した.受診率は肺がんが高く,取組みとしては企業・団体実施のがん検診費用補助が最多であった.クラスター分析によって分類された3群では,5がん検診受診率において積極群と中庸群の差の効果量はHedges’ ds < 0.30とほとんど差はないが,中庸群と消極群の差の効果量はHedges’ ds > 0.88と非常に大きなものであることが示された.また,重回帰分析の結果,胃がん,肺がん,大腸がんの検診受診率に対しては,大腸がん検査キットの全対象者への配布が有意に関連する一方,乳がん,子宮頸がんに対しては,企業・団体実施のがん検診費用補助,就労扱いでの検診受診,受診時の女性受診者への配慮が有意に関連していた.

国内のがん検診受診率は,2019年の国民生活基礎調査による報告で胃がん男性48.0%/女性37.1%,肺がん男性53.4%/女性45.6%,大腸がん男性47.8%/女性40.9%,乳がん47.4%(過去2年),子宮頸がん43.7%(過去2年)であった3.職域でのがん検診受診率は,検査項目及び対象年齢などの実施方法が,保険者や事業主によって異なり,対象者数及び受診者数のすべての把握ができない,また受診率算定のための,統一的なデータフォーマットの仕組みがなく,受診率の把握は困難とされている15.そのため報告は少なく妥当性も不明ではあるが,2016年の健康保険組合に対する厚生労働省の調査では被保険者の受診率が,胃がん56.5%,肺がん71.9%,大腸がん60.8%,乳がん34.7%,子宮頸がん32.2%であった16.都道府県レベルの報告では神奈川県から2017年に胃がん69.4%,肺がん89.4%,大腸がん77.9%,乳がん50.5%,子宮頸がん47.9%,富山県から2019年に胃がん53.0%,肺がん65.2%,大腸がん57.0%,乳がん33.1%,子宮頸がん23.6%などの報告がある17,18.本研究では,胃がん51%,肺がん75%,大腸がん65%,乳がん44%,子宮頸がん35%であり,おおよそ同程度であった.

職場におけるがん検診推進のための取組みの有効性に関して,国の指針となっている職域におけるがん検診に関するマニュアルの中では明記されているもので,本研究の解析対象となったものは以下であった4.検診によるメリットとデメリットなどの説明資料の準備(本研究:16%),国推奨の検診内容での実施推奨(38%),がんに対する情報発信やがん検診の推進(28%),ポスター掲示やセミナーの実施(58%),受診状況把握(49%),検診結果把握への同意取得(21%),精密検査受診状況把握(40%),精密検査結果把握への同意取得(38%)で,本研究での実施率は50%を切るものも多く,さらに国の指針を推し進める必要があると考えられる.2020年の厚生労働省の事業主のがん検診の実施に関する報告では,企業におけるがん検診費用負担が49.7%,がん検診の勤務時間中の受診体制が45.6%,がん検診受診者数の把握が50–60%,要精密検査受診勧奨が57.9%などと報告されており,それぞれ本研究では全体として71%,37%,49%,40%であった19.特に検診費用負担の差が大きいが,企業においてはがん検診は福利厚生の一環として行われていることが多いとされているため,事業主の背景が異なると実施率に差が出るのもやむを得ないだろう20

本研究では企業・団体における取組みの傾向と受診率の関係を把握するために,積極的/中庸/消極的な3群に分割するクラスター分析を行った.その結果見出された興味深い点は,積極群と中庸群で5がん検診受診率にはほぼ差を認めないのに対し,中庸群と消極群で大きな差を認めた点である.取組みをほとんど行っていない消極群では検診受診率が25%–42%と,積極群/中庸群を大きく下回っていた.

続いて男女双方が対象となる胃がん,肺がん,大腸がん検診と,女性のみが対象となる乳がん,子宮頸がんの2つに分け,それぞれ36の取組みのうち,受診率を有意に予測する因子を重回帰分析より導いた.前者では「大腸がん検査キットの全対象者への配布(④検診受診)」であり,後者では「企業・団体実施のがん検診費用補助(①費用負担)」,「就労扱いでの検診受診(②受診日時)」,「受診時の女性受診者への配慮(④検診受診)」であった.これまでの研究では,受診対象者の費用補助は乳がん検診において十分なエビデンスがあり,介入群で平均11.5%のマンモグラフィー受診率向上が報告されている8,21.細胞診の子宮頸がん検診においても17%の受診率向上の報告はあるが,有益な報告のない大腸がん検診と合わせ,CDCからはエビデンスが不十分と指摘されている8,21.同様に,受診者のニーズに合わせた日程や場所の調整などの費用以外の障害の除去に関しても,乳がん検診で17.7%,大腸がん検診で16.1%の受診率向上が報告され推奨されているが,子宮頸がん検診では有効な可能性はあるもののエビデンスが不十分である8,21.このように本研究の重回帰分析から導かれたもののうち,費用負担や受診日時はがんによって多少の違いはあるものの,受診率向上に繋がるエビデンスが報告されている.「大腸がん検査キットの全対象者への配布」も大腸がん検診のアクセスの向上を目指した取組みであり,費用負担や費用以外の障害の除去を複合した行為といってよいだろう.

本調査では5がんそれぞれに対する36の取組みの実施の有無を調査していないため,対象が大きく異なる胃がん/肺がん/大腸がんと,乳がん/子宮頸がんに分け,双方で重回帰分析を行った.本来,大腸がん検診に特有である「大腸がん検査キットの全対象者への配布」を費用負担や受診日時などの項目と同等に扱って解析すべきではないものの,胃がん/肺がん/大腸がんの平均の受診率においても有意な予測因子であったことは注目すべきである.また,我々が「④検診受診」に分類した「受診時の女性受診者への配慮」はこれまでに明らかなエビデンスがあるとはいえない.そもそも「受診時の女性受診者への配慮」という項目が,具体性に欠けた表現であり,これによって受診率向上に寄与する明らかにするのは困難であると考えられる.次回以降の調査では個別インタビューなどにより具体的な女性受診者への配慮を明らかにし,その影響を検討していく必要がある.これまでに様々な取組みの複合的なアプローチの有効性も報告されており,この点は,本研究の中庸群(平均取組み数:10.1)と消極群(1.7)で受診率が有意に異なっていた結果と矛盾しない22

ちなみに,多くのOECD諸国で乳がんや子宮頸がん,大腸がんに対する無料のスクリーニングプログラムが整備されているが,胃がんや肺がんを含め,日本では標準化されたがん検診プログラムは存在しない23,24.さらに,日本や韓国や除き他国では胃がん検診のガイドラインや受診の推奨はない25.肺がん検診においても低線量CTを用いた重喫煙者に対する検診のエビデンスは蓄積されてきたが,日本で厚生労働省により推奨されている喫煙歴に関わらない胸部X線を用いた肺がん検診も一般的でない24,26,27.そのため,胃がん,肺がん検診に関するデータを,国際的に比較することは困難であるとされている24.しかし本研究では国内での検診受診率と取組みの関係に着目しており,胃がん検診と肺がん検診を含めて検討することには一定の妥当性があると考えられる.また胃がん/肺がん/大腸がん,乳がん/子宮頸がんの2群で平均の受診率を従属変数として解析したが,各がん検診毎に企業・団体が対応を変えるのは現実的でなく,対象がおおよそ同じである,上記2群で分析することは理にかなっていると考えている.本研究は横断的調査であり,取組みの数と受診率向上の因果関係を導くことはできないが,重回帰分析で有意であった取組みを消極群などの取組みが少ない企業・団体において実践させることで,がん検診受診率への寄与を今後評価することは可能である.推進パートナーに対する介入研究も計画している.

本研究の限界として以下のような点が挙げられる.1つ目に,本研究は企業アクション推進パートナーの中で,本調査に回答した企業・団体を対象にした解析であり,選択バイアスの問題がある.本研究の解析に利用した,検診受診率を把握しており回答した企業・団体は,企業として健康やヘルスケアに対する関心が高く,検診受診率も高い可能性がある.さらに1,000人以上の企業が3割程度含まれるなど,中小企業が全企業の99.7%を占める国内の現状とは大きく異なる20,28.業種においても本調査では,健康保険組合を除き,多い方から順に製造業(23%),その他サービス業(21%),情報通信業(12%)であったが,総務省からは卸売業・小売業(20%),建設業(9.3%),生活関連サービス業娯楽業(9.1%)と公表されている29.本研究結果は国内企業全体と比較し,大企業や製造業,サービス業を生業とする企業が多く,背景が大きく異なることを加味して解釈をする必要がある.

2つ目にTable 3 より特に女性のがん検診受診率が業種によって有意に異なるという結果を得た.最近の国内の報告でも年齢や収入などが検診受診率に影響を与えるとされているが,本研究ではそれぞれの企業の年齢層や業績などについての調査を行えておらず,それぞれの会社業種における詳細は不明である30

3つ目にがん検診受診率は実数で回答を得たが,50%や100%などの数字が多く,概数で回答している可能性がある.さらに回答内容によって「厚生労働大臣表彰」や「がん対策優良企業表彰」の選出がされる仕様になっていたため,受診率を高めに回答するなどのバイアスがかかっている可能性がある.さらに,本分析では各がんの受診率を答えなかった企業・団体を欠損として扱ったが,そのような企業・団体の中にはそもそもがん対策に関心がないため受診率を把握していない企業が含まれていることが予想される.したがって,(がん対策に関心の薄い)未回答の企業・団体を一律に欠損として扱ったことによって,受診率が実際よりも高く推計されるというバイアスが生じている可能性は否定できない.とはいえ,以上のような限界にもかかわらず,前述したようにがん検診の受診率はばらつきがあるものの厚生労働省や地方自治体の報告とおおよそ同程度であり,バイアスは限定的であると考える3,15,17,18

4つ目にがん検診の詳細な内容については,設問に含めていない.厚生労働省による推奨でないがん検診が行われていることも多数報告されており,本調査でも推奨内容のがん検診受診率を回答していない可能性がある.市区町村の実施するがん検診において,85%の自治体が厚生労働省が推奨する5つのがん検診以外を実施していると報告されている31.この問題は本研究でも抱える大きな課題である.本研究は検診推進の有効な取組みを抽出することが目的であり,がん検診の詳細な内容に関する調査は2022年度以降の課題として,本解析を実施した.

5つ目にがん検診推進の取組みは少々煩雑であり,詳細な回答を要求している設問も多く,回答の正確性には疑問が残る.自由記述で独自の取組みの回答もあり,調査票の中で列挙したがん検診推進の取組みに過不足がある可能性も否定できない.しかし本研究結果と,2020年に厚生労働省の「がん検診のあり方に関する検討会」で報告された職域におけるがん検診の実態調査と可能な範囲で比較すると,がん検診費用負担(本調査企業,健康保険組合:71%,91%/厚生労働省企業,保険者(健康保険組合または健康保険組合連合会加入者):50%,81%),勤務時間中の受診(37%, 30%/46%, 37%),要精密検査受診勧奨(40%, 40%/58%, 36%),受診者数把握(49%, 63%/厚生労働省回答者全体50–60%)であり,その乖離は企業で20%程度以内,健康保険組合で10%以内である19.特に企業での乖離が大きいが,本調査では企業の中で人数規模が50人未満の割合のものが40%(222社)であるのに対し,厚生労働省の報告では2割弱と背景が異なる.費用負担では本調査である推進パートナーで割合が高いが,勤務時間中の受診や要精密検査受診勧奨では厚生労働省の報告で多い.推進パートナーで健康意識が高く,費用負担を行っているが,比較的小規模の企業が多いために勤務時間中の受診や要精密検査の受診勧奨などの運用体制の構築が遅れていることを示唆している可能性がある.

6つ目にがん検診推進の取組みの有無によって非階層クラスター分析を行い3群に分類を行った.しかし,近年には代替的な手法として尤度を用いたクラスター数の決定や確率的に帰属を決定する潜在クラス分析などの手法も用いられるようになっている14,32.今後はこれらの手法を用いることも検討されるべきであろう.これらの限界はあるものの,国内で職域でのがん検診受診率向上と関係する取組みを定量的に評価した研究はこれまでになく,貴重な報告であると考える.

さらに企業アクションでは2022年度以降も継続して実態調査を行っていく方針である.2021年度までは推進パートナーにおける担当者への負担増やそれによる回答率低下への懸念から,がん検診の詳細(検診内容,対象年齢,頻度)を省略した調査を行ってきた.しかし2020年度,2021年度と相当数の回答が得られてきた実績を踏まえ,2022年度以降はより正確な情報を得るために,がん検診の詳細を含めた実態調査を行う予定としている.厚生労働省の推奨以外の検診が自治体を含めた多くの団体で行われている実態を,職域での調査から明らかにすることは今後の体制整備における有益な情報となるはずである.さらに2022年度以降の分析として,限界の1つ目に記載した日本国内の企業分布の実態と本調査の分布が異なることに関して,国内の実態と即した結果を得るために回答に重みづけ補正を分析することや,取組み内容をグループコンセプトマッピングを用いてカテゴリー分けを行い,厚生労働省推奨のがん検診受診率との関連を明らかにすることを目標とする33,34

本研究で導かれた検診受診率に関係する取組みであるが,上で述べたように中庸群と消極群には検診受診率に有意な差を認めた.重回帰分析による有意な因子は,「大腸がん検査キットの全対象者への配布(④検診受診)」,「企業・団体実施のがん検診費用補助(①費用負担)」,「就労扱いでの検診受診(②受診日時)」,「受診時の女性受診者への配慮(④検診受診)」の4つのみであったものの,一定数の取組み数を行うことは,CDCで強く推奨されている複合的アプローチの概念に合致する考えである22.本研究からは消極群が中庸群に変わることが全体のがん検診受診率向上のためには重要である可能性があり,これまでほとんど何も取組みがないような企業・団体への行動変容を促すことが肝心であろう.がん対策推進企業アクションは今後も,「大人へのがん教育」を通して,がん検診受診率の向上と,がんに正しく立ち向かうことができる社会の構築を目指して活動していく.

5. 結論

本研究ではがん対策推進企業アクションが,推進パートナーに対して2021年度に行った「がん検診受診率の現状調査,がん検診推進の取組み,及びがん患者の就労支援の実態調査」の結果を報告した.がん検診推進の取組みによって分類した「積極群」「中庸群」「消極群」において,中庸群と消極群の5がん検診受診率が有意に異なっていた.「大腸がん検査キットの全対象者への配布」,「企業・団体実施のがん検診費用補助」,「就労扱いでの検診受診」,「受診時の女性受診者への配慮」が検診受診率に有意に影響する因子であり,消極群などの取組みが少ない企業・団体でこれらの取組みの実施を啓蒙することで,がん検診受診率の向上に結びつく可能性がある.

謝辞

本調査にご協力いただいたがん対策推進企業アクション推進パートナー企業・団体の担当者の方々,企業アクション事務局に深く感謝いたします.実態調査の調査票やその他の結果,両立支援に関する報告はがん対策推進企業アクションHPをご参照ください35

なお補足として各がん検診における,取り組み実施群と非実施群の受診率の差の検定(Welchのt検定)の結果をAppendix 3として記載した.

利益相反

利益相反自己申告:福吉氏は株式会社キャンサースキャンの代表取締役であるが,がん対策推進企業アクションのアドバイザリーボードメンバーにてアンケート調査の専門家として個人としての活動を依頼されており,本論文の調査,研究には法人としての関与はない.また,本件の調査,研究は,がん対策推進企業アクションの活動の一環として行われており,その研究デザイン,結果及び結論が株式会社キャンサースキャンの利益等には関与しない.なお,他の著者は,株式会社キャンサースキャンとの関与はない.

文献
Appendix

Appendix 1 . 受診の把握有無を従属変数とした重回帰分析
取組みの内容N = 704
BS.E.pβ95%CI
①費用負担
企業・団体実施のがん検診費用補助0.190.050.00**0.18[ 0.09, 0.27]
検査機関までの交通費補助
/費用の給与からの天引き
0.000.040.970.00[-0.07, 0.07]
費用の給与からの天引き-0.020.050.77-0.01[-0.08, 0.06]
自治体実施のがん検診受診費用補助0.110.040.02*0.08[ 0.02, 0.15]
②受診日時
予めの受診日時決定0.030.040.530.03[-0.05, 0.11]
受診者希望による日時決定0.000.050.940.00[-0.09, 0.10]
就労扱いでの検診受診-0.020.040.54-0.02[-0.10, 0.05]
特別休暇での検診受診0.110.090.230.04[-0.03, 0.11]
③受診場所
職場での一斉検診0.010.040.750.01[-0.07, 0.10]
受診者希望による医療機関決定0.000.040.940.00[-0.09, 0.09]
④検診受診
受診者希望の検診項目選定-0.010.040.88-0.01[-0.08, 0.07]
説明資料の準備0.000.050.940.00[-0.08, 0.08]
国推奨の検診内容での実施推奨0.050.040.220.05[-0.03, 0.12]
健康診断とがん検診の同時受診体制の構築0.000.040.930.00[-0.09, 0.08]
受診時の女性受診者への配慮0.010.040.760.01[-0.06, 0.08]
大腸がん検査キットの全対象者への配布0.070.040.090.06[-0.01, 0.14]
⑤受診勧奨
受診対象者への連絡0.090.040.03*0.09[ 0.01, 0.17]
未受診者へのリマインダー0.060.040.100.06[-0.01, 0.14]
管理職に対する通知-0.010.040.83-0.01[-0.08, 0.07]
⑥啓発
がんに対する情報発信やがん検診の推進0.000.040.980.00[-0.08, 0.08]
ポスター掲示やセミナーの実施0.050.030.180.05[-0.02, 0.12]
企業アクション発行書籍の推奨0.030.030.400.03[-0.04, 0.09]
企業アクション作成e-Learningの導入-0.020.060.71-0.01[-0.08, 0.05]
⑦検診結果把握
受診状況把握0.180.040.00**0.20[ 0.11, 0.28]
健診結果把握への同意取得0.070.040.090.07[-0.01, 0.16]
精密検査受診状況把握-0.010.050.80-0.01[-0.10, 0.08]
精密検査結果把握への同意取得-0.010.050.84-0.01[-0.10, 0.08]
要精密検査対象者への受診勧奨0.050.040.170.05[-0.02, 0.13]
精密検査費用補助0.000.050.950.00[-0.06, 0.07]
⑧経営層・管理職
受診勧奨するよう管理職へ通知0.030.040.370.03[-0.04, 0.11]
事業所別の受診率明示0.090.040.050.07[ 0.00, 0.14]
専門委員会の設置-0.030.050.52-0.02[-0.10, 0.05]
⑨被扶養者の受診
被扶養者の受診率把握0.180.050.00**0.16[ 0.08, 0.24]
被扶養者への受診勧奨0.030.040.380.03[-0.04, 0.11]
被扶養者への検診案内郵送-0.020.050.60-0.02[-0.11, 0.06]
被扶養者検診費用補助-0.140.040.00**-0.14[-0.23,-0.05]
企業・団体規模
20名以下(ref.)
21~100名-0.210.050.00**-0.19[-0.27,-0.10]
101~1,000名-0.220.050.00**-0.21[-0.31,-0.12]
1,001~5,000名-0.210.060.00**-0.17[-0.26,-0.07]
5,001名以上-0.130.070.05*-0.09[-0.19, 0.00]
業種
健康保険組合(ref.)
建設業0.080.080.310.04[-0.04, 0.12]
製造業0.050.060.400.04[-0.06, 0.14]
情報通信業0.020.070.780.01[-0.08, 0.10]
運輸郵便業0.010.100.900.00[-0.07, 0.08]
卸売業・小売業0.010.070.860.01[-0.08, 0.09]
医療福祉業0.060.080.450.03[-0.05, 0.12]
生活関連サービス業娯楽業0.080.080.320.04[-0.04, 0.11]
学術研究専門技術サービス0.110.120.320.04[-0.03, 0.11]
その他サービス業0.010.060.820.01[-0.09, 0.11]
その他0.030.090.730.01[-0.06, 0.09]

注1)「把握している」あるいは「一部把握している」と回答した企業・団体を1,「把握していない」と回答した企業・団体を0としてコーディングした分析.B:偏回帰係数,β:標準化偏回帰係数,**p < .01, *p < .05.

Appendix 2 . 各がんの検診受診率を従属変数とした重回帰分析
取組みの内容胃がん(N = 367)肺がん(N = 352)大腸がん(N = 367)乳がん(N = 337)子宮頸がん(N = 331)
BS.E.pβ95%CIBS.E.pβ95%CIBS.E.pβ95%CIBS.E.pβ95%CIBS.E.pβ95%CI
①費用負担
企業・団体実施のがん検診費用補助5.635.710.320.08[-0.08, 0.23]12.796.380.05*0.17[ 0.00, 0.34]11.675.520.04*0.17[ 0.01, 0.32]17.795.910.00**0.23[ 0.08, 0.38]17.976.240.00**0.23[ 0.07, 0.38]
検査機関までの交通費補助
/費用の給与からの天引き
3.794.460.400.04[-0.06, 0.15]3.434.780.470.04[-0.07, 0.14]4.834.190.250.06[-0.04, 0.16]2.344.570.610.03[-0.07, 0.13]-1.754.970.72-0.02[-0.12, 0.09]
費用の給与からの天引き-1.135.330.83-0.01[-0.11, 0.09]-6.905.950.25-0.06[-0.17, 0.04]-5.435.120.29-0.05[-0.15, 0.05]-7.925.890.18-0.07[-0.18, 0.03]-8.036.190.20-0.07[-0.18, 0.04]
自治体実施のがん検診受診費用補助6.434.540.160.07[-0.03, 0.18]9.684.810.05*0.11[ 0.00, 0.21]9.224.340.03*0.11[ 0.01, 0.21]0.604.750.900.01[-0.09, 0.11]-2.154.930.66-0.02[-0.13, 0.08]
②受診日時
予めの受診日時決定6.504.240.130.09[-0.03, 0.21]7.414.430.100.10[-0.02, 0.22]7.543.990.060.11[ 0.00, 0.23]3.974.450.370.05[-0.06, 0.17]0.524.730.910.01[-0.12, 0.13]
受診者希望による日時決定-0.844.730.86-0.01[-0.16, 0.13]-0.375.070.94-0.01[-0.16, 0.14]2.274.530.620.04[-0.11, 0.18]4.385.240.400.06[-0.09, 0.22]3.095.550.580.04[-0.11, 0.20]
就労扱いでの検診受診5.113.940.200.08[-0.04, 0.19]-0.114.140.980.00[-0.12, 0.12]-0.093.690.980.00[-0.12, 0.11]13.954.230.00**0.20[ 0.08, 0.32]9.364.420.04*0.13[ 0.01, 0.25]
特別休暇での検診受診-9.398.780.29-0.05[-0.15, 0.04]-2.759.470.77-0.01[-0.11, 0.08]-18.138.530.03*-0.10[-0.20,-0.01]-7.568.790.39-0.04[-0.13, 0.05]-5.069.350.59-0.03[-0.12, 0.07]
③受診場所
職場での一斉検診-2.514.530.58-0.04[-0.17, 0.10]2.124.710.650.03[-0.10, 0.16]-1.524.250.72-0.02[-0.15, 0.11]-8.864.850.07-0.12[-0.26, 0.01]-2.905.190.58-0.04[-0.18, 0.10]
受診者希望による医療機関決定3.744.340.390.06[-0.07, 0.19]2.064.680.660.03[-0.11, 0.17]-0.534.130.90-0.01[-0.14, 0.12]-0.304.970.950.00[-0.15, 0.14]0.935.190.860.01[-0.13, 0.16]
④検診受診
受診者希望の検診項目選定-5.283.880.17-0.08[-0.20, 0.04]-3.514.040.39-0.05[-0.17, 0.07]-4.243.640.25-0.07[-0.19, 0.05]4.604.110.260.07[-0.05, 0.19]1.564.340.720.02[-0.10, 0.15]
説明資料の準備-6.985.020.17-0.08[-0.19, 0.03]-13.425.300.01*-0.15[-0.26,-0.03]-1.994.800.68-0.02[-0.14, 0.09]-1.135.120.82-0.01[-0.12, 0.10]-4.995.340.35-0.05[-0.16, 0.06]
国推奨の検診内容での実施推奨7.373.910.060.11[ 0.00, 0.23]8.764.060.03*0.13[ 0.01, 0.25]6.013.640.100.10[-0.02, 0.21]-5.654.260.19-0.08[-0.20, 0.04]-1.274.480.78-0.02[-0.14, 0.11]
健康診断とがん検診の同時受診体制の構築-0.234.090.960.00[-0.13, 0.12]5.084.270.240.08[-0.05, 0.21]1.473.770.700.02[-0.10, 0.15]-0.144.490.970.00[-0.13, 0.13]-1.064.670.82-0.02[-0.15, 0.12]
受診時の女性受診者への配慮1.263.880.750.02[-0.09, 0.12]-0.684.080.87-0.01[-0.11, 0.10]-2.763.570.44-0.04[-0.14, 0.06]11.174.110.01**0.14[ 0.04, 0.25]14.154.350.00**0.18[ 0.07, 0.29]
大腸がん検査キットの全対象者への配布9.873.940.01*0.13[ 0.03, 0.24]6.294.010.120.08[-0.02, 0.18]15.383.650.00**0.21[ 0.11, 0.31]-3.114.290.47-0.04[-0.15, 0.07]-6.194.520.17-0.08[-0.19, 0.03]
⑤受診勧奨
受診対象者への連絡4.384.860.370.06[-0.08, 0.21]4.215.080.410.06[-0.08, 0.20]6.014.500.180.09[-0.04, 0.23]-3.375.090.51-0.05[-0.19, 0.09]-6.605.430.23-0.09[-0.24, 0.06]
未受診者へのリマインダー1.153.820.760.02[-0.10, 0.13]-4.064.000.31-0.06[-0.17, 0.06]2.053.540.560.03[-0.08, 0.14]6.754.020.090.10[-0.02, 0.21]5.124.190.220.07[-0.04, 0.19]
管理職に対する通知-2.444.390.58-0.03[-0.14, 0.08]1.964.480.660.02[-0.09, 0.13]-1.984.190.64-0.03[-0.14, 0.08]1.524.420.730.02[-0.09, 0.12]0.274.700.950.00[-0.11, 0.11]
⑥啓発
がんに対する情報発信やがん検診の推進2.704.270.530.04[-0.08, 0.16]0.234.450.960.00[-0.12, 0.12]2.874.010.470.04[-0.07, 0.16]-2.514.580.58-0.03[-0.15, 0.09]-4.964.990.32-0.06[-0.19, 0.06]
ポスター掲示やセミナーの実施-1.003.930.80-0.02[-0.14, 0.10]-2.554.090.53-0.04[-0.16, 0.08]-2.803.630.44-0.05[-0.16, 0.07]-5.144.280.23-0.08[-0.20, 0.05]-5.154.570.26-0.07[-0.20, 0.06]
企業アクション発行書籍の推奨-1.063.550.77-0.02[-0.12, 0.09]4.113.720.270.06[-0.05, 0.17]4.613.310.170.07[-0.03, 0.17]2.753.790.470.04[-0.07, 0.15]4.354.040.280.06[-0.05, 0.17]
企業アクション作成e-Learningの導入-0.545.250.920.00[-0.10, 0.09]-1.095.430.84-0.01[-0.10, 0.08]-0.854.990.87-0.01[-0.10, 0.08]6.245.610.270.05[-0.04, 0.15]2.775.830.640.02[-0.07, 0.12]
⑦検診結果把握
受診状況把握8.064.490.070.13[-0.01, 0.27]3.994.770.400.06[-0.08, 0.20]6.244.240.140.10[-0.03, 0.24]1.004.850.840.01[-0.13, 0.16]1.265.170.810.02[-0.13, 0.17]
健診結果把握への同意取得2.344.420.600.04[-0.10, 0.17]4.884.530.280.07[-0.06, 0.21]-0.254.100.950.00[-0.14, 0.13]-3.474.580.45-0.05[-0.18, 0.08]-1.435.000.78-0.02[-0.16, 0.12]
精密検査受診状況把握-1.654.970.74-0.02[-0.16, 0.11]0.125.280.980.00[-0.14, 0.14]2.804.630.550.04[-0.09, 0.18]0.425.310.940.01[-0.13, 0.15]-3.255.870.58-0.04[-0.19, 0.11]
精密検査結果把握への同意取得-2.575.520.64-0.03[-0.18, 0.11]-3.275.580.56-0.04[-0.18, 0.10]-2.845.100.58-0.04[-0.17, 0.10]3.365.610.550.04[-0.10, 0.18]6.366.180.300.08[-0.07, 0.22]
要精密検査対象者への受診勧奨0.464.030.910.01[-0.12, 0.13]8.764.260.04*0.13[ 0.01, 0.26]1.383.750.710.02[-0.10, 0.14]2.384.030.560.03[-0.08, 0.15]0.444.210.920.01[-0.11, 0.13]
精密検査費用補助10.394.860.03*0.10[ 0.01, 0.20]1.535.300.770.01[-0.09, 0.12]0.234.510.960.00[-0.09, 0.09]10.675.190.04*0.10[ 0.00, 0.20]10.865.730.060.10[ 0.00, 0.20]
⑧経営層・管理職
受診勧奨するよう管理職へ通知3.454.010.390.05[-0.07, 0.17]1.524.130.710.02[-0.10, 0.14]2.073.820.590.03[-0.09, 0.15]-0.784.230.85-0.01[-0.13, 0.11]2.574.490.570.04[-0.09, 0.16]
事業所別の受診率明示-2.634.380.55-0.03[-0.13, 0.07]-0.444.560.920.00[-0.11, 0.10]-3.744.060.36-0.05[-0.14, 0.05]-7.894.530.08-0.09[-0.19, 0.01]-6.954.780.15-0.08[-0.18, 0.03]
専門委員会の設置2.004.980.690.02[-0.08, 0.13]6.155.220.240.06[-0.04, 0.17]1.234.520.790.01[-0.09, 0.11]-3.765.150.47-0.04[-0.14, 0.06]-8.035.450.14-0.08[-0.19, 0.03]
⑨被扶養者の受診
被扶養者の受診率把握-1.594.830.74-0.02[-0.14, 0.10]-5.975.070.24-0.08[-0.20, 0.05]-4.954.430.26-0.07[-0.19, 0.05]-8.835.240.09-0.11[-0.24, 0.02]-0.385.550.950.00[-0.14, 0.13]
被扶養者への受診勧奨-2.063.930.60-0.03[-0.15, 0.09]-1.424.210.74-0.02[-0.14, 0.10]-0.263.670.940.00[-0.12, 0.11]5.004.190.230.07[-0.05, 0.19]7.844.530.080.11[-0.02, 0.24]
被扶養者への検診案内郵送3.015.110.560.04[-0.10, 0.18]-0.895.400.87-0.01[-0.15, 0.13]8.424.810.080.12[-0.01, 0.26]3.845.500.490.05[-0.09, 0.19]3.825.900.520.05[-0.10, 0.20]
被扶養者検診費用補助-6.824.640.14-0.10[-0.24, 0.03]-4.304.860.38-0.06[-0.20, 0.08]-10.584.300.01*-0.17[-0.30,-0.03]3.145.050.540.04[-0.10, 0.19]5.125.340.340.07[-0.08, 0.22]
企業・団体規模
20名以下(ref.)(ref.)(ref.)(ref.)(ref.)
21~100名3.955.760.490.05[-0.10, 0.20]8.476.090.160.11[-0.04, 0.26]5.755.450.290.08[-0.07, 0.23]1.715.730.770.02[-0.12, 0.16]1.946.080.750.02[-0.12, 0.17]
101~1,000名-3.125.820.59-0.04[-0.20, 0.12]9.196.300.150.12[-0.04, 0.29]7.385.650.190.11[-0.05, 0.27]-3.646.310.56-0.05[-0.21, 0.12]-11.586.840.09-0.15[-0.32, 0.02]
1,001~5,000名-4.147.180.56-0.05[-0.21, 0.12]16.577.390.03*0.19[ 0.02, 0.35]4.096.750.540.05[-0.11, 0.21]4.177.570.580.05[-0.12, 0.21]-2.348.210.78-0.03[-0.20, 0.15]
5,001名以上-11.047.310.13-0.11[-0.26, 0.03]7.157.590.350.07[-0.08, 0.22]-0.596.840.93-0.01[-0.15, 0.14]-4.647.980.56-0.05[-0.20, 0.11]-14.018.750.11-0.14[-0.30, 0.03]
業種
健康保険組合(ref.)(ref.)(ref.)(ref.)(ref.)
建設業6.698.550.430.05[-0.08, 0.18]-1.538.850.86-0.01[-0.14, 0.11]-3.838.000.63-0.03[-0.15, 0.09]21.839.590.02*0.15[ 0.02, 0.29]32.0911.020.00**0.22[ 0.07, 0.37]
製造業-0.226.210.970.00[-0.15, 0.15]-1.656.470.80-0.02[-0.17, 0.13]-3.815.650.50-0.05[-0.19, 0.09]17.166.480.01**0.20[ 0.05, 0.35]17.357.100.02*0.20[ 0.04, 0.36]
情報通信業7.528.060.350.07[-0.08, 0.21]6.688.690.440.06[-0.09, 0.21]7.107.620.350.07[-0.07, 0.21]18.038.430.03*0.16[ 0.01, 0.30]19.019.110.04*0.16[ 0.01, 0.31]
運輸郵便業-5.1511.190.65-0.03[-0.15, 0.09]-0.1411.110.990.00[-0.11, 0.11]-0.2411.440.980.00[-0.13, 0.12]3.2511.620.780.02[-0.10, 0.13]4.1712.840.750.02[-0.11, 0.15]
卸売業・小売業10.218.100.210.09[-0.05, 0.23]11.818.020.140.10[-0.03, 0.24]3.747.400.610.03[-0.10, 0.17]14.948.350.070.13[-0.01, 0.26]22.358.900.01*0.18[ 0.04, 0.33]
医療福祉業-11.548.570.18-0.09[-0.23, 0.04]10.548.830.230.08[-0.05, 0.21]-6.967.830.37-0.06[-0.18, 0.07]5.249.010.560.04[-0.09, 0.17]13.049.860.190.10[-0.05, 0.24]
生活関連サービス業娯楽業23.718.800.01**0.16[ 0.04, 0.27]13.559.290.150.09[-0.03, 0.21]17.208.080.03*0.12[ 0.01, 0.23]7.789.980.440.05[-0.07, 0.17]10.1110.880.350.06[-0.07, 0.20]
学術研究専門技術サービス21.3112.610.090.10[-0.02, 0.21]-1.9012.440.88-0.01[-0.12, 0.10]6.7610.750.530.03[-0.07, 0.13]31.9412.140.01**0.14[ 0.03, 0.24]42.7113.460.00**0.18[ 0.07, 0.29]
その他サービス業5.607.230.440.07[-0.10, 0.23]4.307.600.570.05[-0.12, 0.22]-0.246.750.970.00[-0.17, 0.16]25.817.500.00**0.29[ 0.12, 0.46]23.798.160.00**0.26[ 0.09, 0.44]
その他7.2610.910.510.04[-0.08, 0.17]6.2411.300.580.04[-0.09, 0.16]-5.7210.460.58-0.04[-0.16, 0.09]12.1412.520.330.07[-0.07, 0.21]30.7913.320.02*0.17[ 0.03, 0.31]

B:偏回帰係数,β:標準化偏回帰係数,**p < .01, *p < .05.

Appendix 3 . 各取り組み実施群と非実施群の受診率の差の検定
取組みの内容胃がん(N = 367)肺がん(N = 352)大腸がん(N = 367)乳がん(N = 337)子宮頸がん(N = 331)
MpdMpdMpdMpdMpd
非実施群実施群非実施群実施群非実施群実施群非実施群実施群非実施群実施群
①費用負担
企業・団体実施のがん検診費用補助54.3366.240.070.3858.2682.080.00**0.7454.3072.770.01*0.6138.5359.610.00**0.6434.4852.490.00**0.54
検査機関までの交通費補助
/費用の給与からの天引き
62.9071.960.02*0.2978.2085.430.060.2268.9278.010.01*0.3054.0166.530.00**0.3848.4155.890.070.22
費用の給与からの天引き64.7965.510.890.0279.8479.240.92-0.0270.7871.930.830.0457.2752.690.40-0.1450.9142.260.13-0.25
自治体実施のがん検診受診費用補助64.4666.640.570.0778.0687.260.01*0.2869.8975.290.150.1858.2550.740.08-0.2252.0441.620.02*-0.31
②受診日時
予めの受診日時決定61.8370.290.01**0.2775.0688.350.00**0.4166.0879.300.00**0.4455.2360.160.190.1549.7550.540.840.02
受診者希望による日時決定65.2764.700.88-0.0278.8380.170.730.0469.6271.500.600.0650.3559.290.04*0.2745.6151.600.200.18
就労扱いでの検診受診59.2971.010.00**0.3875.0784.950.00**0.3065.7476.690.00**0.3647.2567.870.00**0.6543.2857.800.00**0.43
特別休暇での検診受診65.5349.600.11-0.5080.0174.140.56-0.1871.7050.930.08-0.6957.4144.440.15-0.3950.6635.870.09-0.43
③受診場所
職場での一斉検診64.2765.680.670.0474.6686.600.00**0.3766.7276.250.00**0.3258.3354.270.27-0.1252.4245.980.09-0.19
受診者希望による医療機関決定64.1765.220.770.0381.2279.140.58-0.0672.9569.870.36-0.1054.4157.790.420.1047.0951.190.340.12
④検診受診
受診者希望の検診項目選定70.3161.630.01*-0.2881.4578.830.47-0.0873.9369.100.15-0.1653.2158.760.170.1750.2649.830.92-0.01
説明資料の準備65.7361.950.35-0.1279.8279.640.97-0.0170.3972.700.530.0855.9959.300.400.1050.9147.210.36-0.11
国推奨の検診内容での実施推奨61.8367.940.060.1973.7185.320.00**0.3667.0174.780.01*0.2654.8158.820.270.1248.3751.640.380.10
健康診断とがん検診の同時受診体制の構築61.6166.800.160.1670.6985.370.00**0.4664.0875.070.00**0.3750.7560.500.01*0.2947.6751.450.350.11
受診時の女性受診者への配慮64.1166.460.480.0777.7083.650.090.1869.6973.260.270.1252.0465.080.00**0.4045.6757.590.00**0.35
大腸がん検査キットの全対象者への配布60.2473.530.00**0.4374.4989.160.00**0.4663.0884.350.00**0.7455.6659.280.330.1150.4648.960.69-0.04
⑤受診勧奨
受診対象者への連絡57.9766.420.070.2771.4881.560.050.3160.4173.290.01**0.4349.9158.600.080.2647.1650.740.470.10
未受診者へのリマインダー62.9167.280.180.1477.0282.880.090.1867.7074.660.03*0.2350.2164.080.00**0.4245.9154.630.02*0.26
管理職に対する通知64.7165.350.860.0277.3785.870.02*0.2669.7974.140.210.1455.7059.600.330.1249.3651.690.570.07
⑥啓発
がんに対する情報発信やがん検診の推進64.2965.860.640.0576.9184.500.03*0.2368.7874.470.070.1956.0058.130.560.0650.5848.980.67-0.05
ポスター掲示やセミナーの実施65.0164.810.96-0.0179.9579.700.95-0.0170.5471.080.880.0255.5357.360.650.0550.5649.730.84-0.02
企業アクション発行書籍の推奨63.5366.700.350.1077.9582.160.230.1367.5975.100.02*0.2553.1961.690.02*0.2646.4355.100.02*0.26
企業アクション作成e-Learningの導入64.4068.150.420.1278.8985.600.130.2070.2375.730.180.1855.5566.080.04*0.3249.3154.800.290.16
⑦検診結果把握
受診状況把握57.0167.700.01*0.3467.6284.150.00**0.5259.3474.890.00**0.5251.7058.710.120.2148.8850.420.740.05
健診結果把握への同意取得61.6866.940.140.1771.6585.280.00**0.4265.0374.740.00**0.3254.1658.540.260.1349.7950.130.930.01
精密検査受診状況把握63.4267.010.280.1175.3886.070.00**0.3367.3476.070.00**0.2953.3062.370.01*0.2748.3652.680.260.13
精密検査結果把握への同意取得64.4865.720.720.0476.7885.970.01**0.2869.0474.930.070.1954.2862.360.03*0.2448.6652.970.270.13
要精密検査対象者への受診勧奨61.5868.190.05*0.2171.1687.480.00**0.5165.0176.580.00**0.3950.9762.660.00**0.3547.3552.550.170.15
精密検査費用補助63.5772.270.05*0.2878.7685.960.100.2270.3673.860.400.1155.2266.290.03*0.3348.8557.410.130.25
⑧経営層・管理職
受診勧奨するよう管理職へ通知63.1467.050.240.1277.3282.840.110.1768.2474.430.050.2055.3458.690.360.1048.3552.260.310.11
事業所別の受診率明示65.5662.540.46-0.0979.6380.290.880.0271.4968.920.50-0.0858.0152.770.22-0.1651.3345.510.18-0.17
専門委員会の設置66.3458.970.05-0.2378.9283.300.250.1371.2369.690.66-0.0558.8449.000.02*-0.3052.6839.590.00**-0.39
⑨被扶養者の受診
被扶養者の受診率把握66.8461.030.08-0.1880.1479.010.76-0.0371.9468.940.35-0.1060.1450.760.01**-0.2852.9244.830.03*-0.24
被扶養者への受診勧奨65.9663.660.49-0.0779.3880.230.810.0370.1471.760.610.0556.7856.820.990.0049.1850.830.660.05
被扶養者への検診案内郵送65.8962.760.35-0.1078.8181.880.390.0969.5773.580.200.1357.8154.900.41-0.0951.5546.990.20-0.13
被扶養者検診費用補助67.5161.500.07-0.1978.0282.100.240.1271.3070.430.78-0.0357.6955.710.58-0.0652.4447.110.15-0.16

d: Hedges’ d; **p < .01, *p < .05.

 
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