産業衛生学雑誌
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原著
新型コロナウイルス感染症流行下におけるバス事業労働者のメンタルヘルスと新型コロナウイルス恐怖および雇用の不安定性との関連
赤川 景子 渡井 いずみ
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2024 年 66 巻 1 号 p. 15-25

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抄録

目的:COVID-19第2波流行時におけるバス事業労働者のメンタルヘルスと新型コロナウイルス恐怖,雇用の不安定性との関連性を明らかにすることである.対象と方法:2020年9月に,東海地方の私鉄系バス会社3社の従業員1,889名を対象に無記名自記式質問紙を配布した.調査項目は,抑うつ,不安,新型コロナウイルス恐怖,雇用の不安定性,基本属性,労働属性である.従属変数を抑うつ,不安,独立変数を新型コロナウイルス恐怖,雇用の不安定性,基本属性,労働属性としたロジスティック回帰分析を行った.結果:回収した調査票のうち,精神疾患の既往あり等を除いた1,316名を分析対象とした(有効回答率69.7%).多重ロジスティック回帰分析の結果,抑うつのオッズ比は,新型コロナウイルス恐怖および雇用の不安定性の低群と比較して中群と高群で有意に高かった.また,不安のオッズ比についても,新型コロナウイルス恐怖および雇用の不安定性の低群と比較して中群と高群で有意に高かった.考察と結論:COVID-19第2波流行時のバス事業労働者において,新型コロナウイルス恐怖および雇用の不安定性はそれぞれ抑うつと不安のリスク因子であることが明らかになった.さらに雇用の不安定性が新型コロナウイルス恐怖よりも抑うつ,不安に対するリスク要因としてより高いリスク要因であることが明らかになった.エッセンシャルワーカーであるバス事業におけるメンタルヘルス対策としては,十分な感染対策の徹底と,労働者の雇用の不安定性に対する対策を同時に進めることが重要と考える.

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