産業衛生学雑誌
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産業保健専門職による定期健康診断の問診項目の試案作成
池上 和範安藤 肇馬場 宏佳世古口 真吾吉武 英隆菅野 良介野澤 弘樹長谷川 将之大神 明
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論文ID: 2022-025-E

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抄録

【目的】本邦で実施されている職域の定期健康診断において,標準的な問診票として示されたものがない.そのため,問診情報が産業保健スタッフにとって有益なものとはなっていない可能性や,問診情報を縦断データとして管理することが困難であることなどの諸々の問題が存在すると考える.本研究は,産業保健実務の視点から,定期健康診断において必要とされる項目を検討し,標準的な問診票の試案作成を目的とする.【方法】本研究は産業保健専門職の協力を得て,デルファイ法による定期健康診断の問診項目について検討を行った非介入研究である.2018年2月から2020年11月に実施された.産業保健に関連する資格を有し,定期健康診断の問診票の情報を業務で利用している産業医および産業看護職の全22名の専門家に研究参加を依頼した.全国の70の企業外労働衛生機関で使用されている問診票を入手し,全ての問診票の項目を抽出した.そして,重複項目および類似項目を整理・統合し,8の大項目(「個人属性」,「仕事関連情報・業務歴」,「生活歴,自覚症状」,「現病歴,既往歴」,「家族歴」,「妊娠の有無」)と589の小項目にまとめた.参加者に,個人属性と妊娠の有無に関する小項目を除いた小項目の必要性について,5段階リッカート尺度で評価してもらった.評価が低い問診項目を除外した調査用質問票を再作成し,参加者へ集計結果を添えて配布し,同様に評価してもらう手順を3回繰り返し,3回目の合意割合が7割を超えた問診項目を採用した.最終的に採用された問診項目を再度参加者に確認してもらい,全ての参加者の合意を得た.【結果】最終的に5の大項目と85の小項目が採用された.大項目別の内訳は,「仕事関連情報・業務歴」が12項目,「生活歴」が11項目,「自覚症状」が22項目,「現病歴」が37項目,「既往歴」が3項目であった.【考察】本研究で,仕事情報・業務歴や自覚症状,現病歴の大分類から多くの問診項目案が採用され,産業保健の実務に活用可能な問診情報を概観できた.今後,本研究を踏まえて,実装可能な問診票を開発し,健康情報管理や利活用の方法などを検討する必要がある.

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