産業衛生学雑誌
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コロナ禍の中小企業における職場環境変化と展開した取り組み,成果,促進要因~経営者・人事労務担当者へのインタビュー調査より~
錦戸 典子田島 麻琴安部 仁美松本 泉美今井 鉄平寺田 勇人齋藤 明子茅嶋 康太郎
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論文ID: 2022-034-E

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抄録

目的:中小企業におけるコロナ禍の職場環境変化とストレス,展開された取り組みと成果,および促進要因を,企業関係者の視点から明らかにすることを,本研究の目的とした.方法:従業員300人未満の中小企業の経営者または人事労務担当者を対象に,2021年秋に,コロナ禍による職場環境の変化とストレス,取り組み,成果,促進要因について半構造化面接を行った.逐語録または聞き取りメモからコードを抽出し,内容の類似性に着目してカテゴリー化した.結果:16社へのインタビュー調査の結果,コロナ禍による職場環境の変化とストレスとして,【感染蔓延下でも出勤せざるを得ない葛藤と感染不安】,【急激に突き付けられた新たな働き方への不慣れや孤独感】,【職場仲間との横のつながりや気分転換の機会が消失】,【将来不安,疎外感,メンタルヘルス不調の出現】の4つの大カテゴリーが抽出された.それらに対する取り組み内容として,【感染予防と体調管理への手探りの対応】,【業務継続に向け,テレワークを緊急導入】,【オンライン上での情報共有の工夫・促進】,【社内の情緒的なつながりを維持できる場・機会の確保】,【社員の生活を守り会社の存続を図る経済・経営対策】,【社員の健康維持増進に向けた支援】,【社員のニーズ・アイデアを基に対応し,活動継続を支援】の7大カテゴリーが抽出された.成果として,【情報共有が効率化し業績もアップ】,【遠隔でも連帯感や一体感を維持・醸成できた】,【危機に立ち向かう中で,社員自身の主体性や健康意識が高まった】,【新たな状況に適応できつつある】の4大カテゴリーが抽出された.取り組みの促進要因として,【経営者の社員を大切にする姿勢や経営理念】,【社員が意見を出し合い助け合う職場風土】,【情報獲得・資源活用への積極的な姿勢】の3大カテゴリーが見出された.考察:感染対策と業務継続の両立を求めてテレワークを緊急導入した結果,孤独感の増加など新たな働き方へのストレスが増大したことを受け,社員のアイデアを取り入れつつ,人と人のつながりを維持する取り組み等が展開されており,中小企業の特徴と考えられた.その成果として,職場の連帯感の維持や社員の主体性の向上ができたと感じている企業が多く,平時から経営者の社員を大切にする姿勢・経営理念のもと,社員の意見を反映しやすい職場風土を醸成することが有用と考えられた.

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