抄録
積雪寒冷地域の地中伝熱量の実態を把握するため,栽培品目,栽培条件の異なる3 種類の園芸用施設を対象に調査を行った。その結果,同じ日射量の条件であっても,栽培品目によって地中伝熱量の日推移が大きく異なることが明らかとなった。バラの養液栽培のようにハウス床面の全面が茎葉で覆われる条件における夜間の上向き地中伝熱量は,最大でも5 W m-2 以下と非常に小さかった。他方,キュウリやオウトウの場合は,昼間の日射に応じた土壌への蓄熱が確認され,夜間の上向き地中伝熱量は最大で20 W m-2 を記録した。地中伝熱量の長期計測の結果,短期計測と同様に栽培条件による違いが確認された。また,日射量が多くなる3 月以降において,上向きの地中伝熱量は増加しなかった。ハウス内の植物体の生育が進むことにより地表面に到達する日射量が減少したことが原因と考えられる。