抄録
未就学聾者は離島に残存していることが言われてきたが,事前調査で新潟県佐渡地区に数名,在住していることがわかった.そこで筆者らは新潟市の聾団体や佐渡市の聾団体・通訳団体・聾家庭の協力を得て,まず実態調査を行い,家庭訪問などを実施し,ホームサインを収録・分析を行った[2].今回,2回目の収録を行ったので,その分析結果について一部を報告する.4.1 表現の基本
Aさんのホームサインは,動作を伴う場合や形状がある場合は,それを基準として表現している.これは主にジェスチャーであるが,手話の源流とも考えられる.
また,基本的に自分自身が中心である.例えば新潟に行くときには,海を渡って行くので,船の表現で,遠くの場所を示している.
4.2 身近にあるモノでの借用
日本手話との大きな違いの一つとして,色の表現が挙げられる.Aさんは,とにかく身近なモノを指さししている.しかし,常に表現したい色が身近にあるわけではない.そこで日本手話では,必ずそこにある身体を使って表現している.「黒」は髪,「赤」は唇,「白」は歯といった表現である.しかし,これらは自分自身では見ることができないため,身近にあるモノを指さしていた.今回は「白」を使うことが多く,ティッシュペーパーを指さしていた.
また,「麦」を示すときに「麦茶」を指さして表現する場面もあった.