ロボットやアニメなど人間の動作を模倣した製品や作品が氾濫しているが、それらを観察すると、呼吸の動きがほとんどない。あるのはため息や深呼吸など大きな動作の時だけである。つまり無意識な呼吸は無視されている。「呼吸は無意識な運動」である。言語のリズムも無意識である。日本語が4拍子であることも知っている人は少ない。長い文章になっても、息継ぎの個所は同じで、これを文節という。呼吸は一定間隔なので、それがリズムとなっている。リズムは一定だが間隔は速度によって変わる.。それがテンポである。人間の呼吸はできるだけ一定にしようとするので、テンポが速くなれば息継ぎの一部を省略することもある。息継ぎは心臓の鼓動と連動しているので、テンポが速くなると鼓動も速くなるし、テンポが遅くなると鼓動もゆっくりになる。眠くなるのは鼓動がゆっくりになった時であるから、発話をゆっくりにするとリラックスした状態になる。対話において、聞き手は発話者のテンポに合わせて聞いているから、発話がゆっくりになると聞き手の呼吸や鼓動も同期する。呼吸や鼓動との関連の研究は未見である。呼吸が筋肉運動を支配しているかどうかは微妙な議論があるが、排気の時に筋肉が弛緩することが知られている。ジェスチャーと言語の関係において、ジェスチャーの動作は言語と同期することが知られている。言語と動作の関連は強いので、音声言語と手話を同時に産出すると、音声対話動作になるのは必然的であり、そのリズムは個人差がほぼない。いわゆる日本語対応手話のリズムに個人差は見られない。個人により差が生じる場合は、手話の習熟度が進み、手話のリズムや語形成がより手話に近づく、いわゆる中間型手話になる場合である。この場合は、コードスイッチなどの現象が起き、発話と動作が交代するような産出になる。
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