日本化粧品技術者会誌
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バイコンティニュアスキュービック液晶を形成する界面活性剤による高内相比W/O乳化
渡辺 啓大村 孝之池田 智子三木 絢子勅使河原 喬史
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2009 年 43 巻 3 号 p. 185-191

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抄録

W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。

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© 2009 日本化粧品技術者会
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