日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
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43 巻, 3 号
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報文
  • 石窪 章, 野田 章
    2009 年43 巻3 号 p. 171-176
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    塗布摩擦力と負荷荷重を同時に測定することができる新しい化粧品基剤の摩擦測定機を開発し,人工皮革に指で乳液を塗布したときの摩擦挙動を測定した。また,その結果と化粧品基剤がしみこんでいく感触である「なじみ感」との相関について考察した。15人の被験者により乳液塗布時の摩擦測定を行った結果,同一サンプルであっても負荷荷重,摩擦力,摩擦係数の経時プロファイルは各被験者によって異なることがわかった。得られた摩擦係数の時間による微分プロファイルの極大値を調べた結果,なじみ感の良好な乳液は極大値が大きい傾向にあり,なじみ感に対して摩擦係数の相対的な変化が重要な影響を与えているものと考えられた。
  • 水越 興治, 及川 みどり, 松本 克夫
    2009 年43 巻3 号 p. 177-184
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    消費者に対する定性的なデプスインタビュー調査を行い,「キメの細かさ」という表現に代表される「肌のなめらかさ」が,女性の求める「理想的に美しい肌」に必要な要素である可能性を見出した。そこでさらにわれわれは「肌のなめらかさ」の実態を明らかにするために,消費者に対する定量的アンケート調査と,皮膚表面形状の測定を行った。その結果,「キメ細かい肌」という言葉に代表される「肌のなめらかさ」という感覚は,皮溝・皮丘などの微視的レベルの皮膚表面構造を意識して生じるのではなく,毛穴などの目視可能レベルな皮膚構造を意識して生じることが明らかとなった。また,「肌のなめらかさ」は特に目の下および鼻横で囲まれる領域(前頬)で意識されることが示された。さらにこの領域の皮膚表面立体形状は年齢とともに,毛穴の拡大などに由来する単純な凹凸量の増加だけではなく,皮膚表面全体が山脈状構造に変化することが明らかとなった。われわれはこの皮膚表面立体形状の変化を「加齢にともなう皮膚のシオレ現象」ととらえた。この変化は「肌がなめらかに見えるかどうか」という感覚に大きな影響を及ぼしていると考えられる。
  • 渡辺 啓, 大村 孝之, 池田 智子, 三木 絢子, 勅使河原 喬史
    2009 年43 巻3 号 p. 185-191
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    W/O乳化は油性の成分を皮膚に展開しやすく,高いエモリエント性などの特徴がある重要な基剤である。このような機能性の一方で,W/O乳化には技術的に改善すべき課題が存在する。本研究では,乳化剤として複数の水酸基を有する親油性の界面活性剤であり,水との共存系で二分子膜が立方晶型に充填した特異なバイコンティニュアスキュービック液晶を形成することが知られているフィタントリオール(3, 7, 11, 15 -tetramethyl- 1, 2, 3 -hexadecanetriol)に着目した。その結果,非極性油,極性油,シリコーン油などさまざまな油分系において,97%もの高内水相比でありながら安定なW/Oクリームを調製することに成功した。乳化メカニズムを解明するため,水,油,フィタントリオール3成分系における相平衡を詳細に検討した。この結果,本乳化系においては,バイコンティニュアスキュービック液晶と構造的な相関性の高いバイコンティニュアスマイクロエマルション相を外相として有するという興味深い乳化メカニズムが明らかになった。さらに,皮膚に塗布時の溶媒の揮発に伴う組成変化により,薄い液晶膜が皮膚上に展開し,さまざまな機能が付与されることが明らかになった。本技術により,重要な機能であるエモリエント性,オクルーション効果がありながら,べたつき,油っぽさがない,極めてさっぱりとした良好な使用感触のクリームが初めて調製可能となった。
  • 加治屋 健太朗, 河合 江理子, 岸本 治郎, デトマー マイケル
    2009 年43 巻3 号 p. 192-196
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    リンパの流れが滞るとむくみが起こることが知られている。皮膚のリンパ管の機能は,不要になった水分や老廃物の排出だけでなく,ウイルスなどの感染からの防御反応として重要な役割を果たしていると考えられてきた。一方で,皮膚の老化への関わりとその分子メカニズムについては未知であった。われわれは,皮膚老化の引き金になる紫外線によって皮膚のリンパ管が顕著に拡張し,その回収機能が低下していることを見出した。また,リンパ管の回収機能の低下は,リンパ管から回収されるべき炎症性細胞を真皮内に留めることになり,炎症状態を長引かせて弾性繊維の分解などの皮膚のダメージにつながることを示した。さらに,このリンパ管機能の低下には,表皮で産生されるリンパ管活性化因子VEGFCの発現低下が関与していることを見出した。これらより,VEGFCの発現低下がリンパ管の機能低下を引き起こしていることが示唆された。そこで,表皮でVEGFCの発現を促進する薬剤を800種以上の化合物と生薬ライブラリーのなかからスクリーニングして化合物MACCにその効果を見出した。MACCはリンパ管に働きかけて紫外線による皮膚ダメージを回復させると考えられる。
ノート
  • 中沢 陽介, 馬 信貞, 李 蕾, 塚越 徳子, 大坪 充恵, 天野 聡, 舛田 勇二, 中山 泰一
    2009 年43 巻3 号 p. 197-200
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    中国人女性の多くは目まわりの美容意識が高く,目袋の目立ちに悩んでいる。本研究では,中国人女性における目袋の実態および目袋の皮膚生理学的な特徴を明らかにすることを目的とした。目袋に悩む中国人女性を対象とし,目の下のたるみ,くま,しわなどの程度を視感評価した。さらに,画像解析によるヘモグロビン量とメラニン量の定量およびCutometerによる皮膚粘弾性の計測を行った。視感判定での目袋の目立ちは,下瞼のたるみや硬さとの相関がみられた。ヘモグロビン量は頬部よりも目の下で多く,目袋部位がうっ血している可能性が示された。くま部位では頬部と比較してメラニン量が高値を示した。皮膚粘弾性は目の下で低く,皮膚のハリが失われている可能性が示された。以上の結果から,中国人女性における目袋の悩みは,目の下の皮膚が形態学的に弛む現象に加え,うっ血や色素沈着などが影響している可能性が示された。
  • 長瀬 忍, 篠崎 孝夫, 土屋 勝, 辻村 久, 増川 克典, 佐藤 直紀, 伊藤 隆司, 小池 謙造
    2009 年43 巻3 号 p. 201-208
    発行日: 2009/09/20
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    毛髪外観は毛髪の形や色,光学物性などの影響を受ける。たとえば,毛髪の形は加齢に伴いうねり(くせ)が強くなることが報告されているが,うねりの増加に起因して毛髪の揃いが乱れ,髪の艶が低下する。そこで本研究では毛髪の形に着目し,毛髪の形と微細構造との関係を明確にすることを目的とし,種々の解析を行い以下の結果を得た。1.蛍光色素のくせ毛内部への浸透挙動は非対称(くせ形状の外側で浸透速度が速く,内側で遅い)であった。この結果は外側・内側における構造/化学組成の違いを示唆する。2.透過型電子顕微鏡観察により,くせの外側では中間径フィラメント(IF)が螺旋状に配列し比較的小さなマクロフィブリルを形成し,くせの内側ではIFは毛髪軸にほぼ平行に配列し比較的大きなマクロフィブリルを形成する傾向が認められた。3.くせ毛を外側と内側に分割しアミノ酸組成を分析した結果,くせの外側にはAsp,Glu,Glyが多く,内側にはCysが多いことが判明した。以上のヒトのくせ毛解析結果は,羊毛のオルト/パラコルテックス細胞の解析結果に似ており,曲がった形の毛髪の構造や組成が哺乳類で共通である可能性を示唆する。
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