2011 年 45 巻 3 号 p. 199-206
ストレスとニキビの関係は以前から指摘されているが,そのメカニズムは明白にはなっていない。グルココルチコイド (GC) は,ストレス時にヒトの副腎皮質から分泌され,免疫抑制作用や抗炎症作用を示す。また,臨床的にはその投与によってニキビ様症状が誘発されることが知られている。一方,ニキビにおいては,アクネ菌によるToll-like receptor 2 (TLR2) の活性化が引き金となり炎症を引き起こしている。本研究ではストレスとニキビの関係を明らかにするため,培養ヒトケラチノサイトのTLR2遺伝子の発現に対するGC の影響を検討した。ケラチノサイトへのGCの投与によってTLR2の遺伝子発現が増加した。また,アクネ菌あるいは炎症性サイトカインであるTNF-αあるいはIL-1αの共存下で,その発現はより顕著に増加した。GCと炎症性サイトカインによるTLR2の遺伝子発現に対して抑制効果を示す植物エキスのスクリーニングを実施し,メリアアザジラクタ (Melia azadirachta) の抽出物が顕著な抑制活性を示すことを見出した。これらの結果から,GCによるTLR2発現増強がニキビの炎症反応を亢進させる可能性が示唆された。さらに,メリアアザジラクタエキスがこの反応を抑制したことからアクネ菌による炎症反応に対する予防効果が期待される。