2012 年 46 巻 3 号 p. 219-223
ヘアアイロンやコテのような高温の熱を利用した毛髪のスタイリングが広がってきているが,毛髪はこのような熱によりダメージを受けてしまう。そこで本研究では,毛髪の熱ダメージおよび,毛髪のアミノ酸組成における熱ダメージの指標について検討した。熱により毛髪中のシスチン残基からランチオニン残基が生成するため,毛髪のアミノ酸組成におけるダメージの指標として利用されてきたシステイン酸に加え,ランチオニンもダメージの指標として確認する必要があると考えられた。実際,ブリーチやパーマを施した毛髪ではシステイン酸の増加がみられたが,熱処理を行った毛髪ではシステイン酸でなくランチオニンの増加がみられた。さらに,熱処理による毛髪の水分量の低下や引張り強度の低下も確認した。以上のことから,熱処理により毛髪がダメージを受けると同時にランチオニンが増加し,熱ダメージの指標として毛髪のアミノ酸組成によるランチオニンの定量が有効であった。