日本化粧品技術者会誌
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46 巻, 3 号
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特集総説 やさしく洗浄する技術(3)
  • —低刺激性・天然系洗浄用界面活性剤の開発と応用—
    押村 英子
    2012 年 46 巻 3 号 p. 183-187
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル フリー
    洗浄用界面活性剤は,泡立ち,汚れを落とし,身体を清潔に保つという本来の機能のほかに,ヒトと環境に対してさまざまなネガティブな作用も示しうる。パーソナルケア用の洗浄用界面活性剤の開発においては,低刺激,マイルドといった「ヒトに対するやさしさ」が特に重視されてきたが,近年では環境への関心の高まりを反映して「地球にやさしい」製品の開発も活発になっている。本稿では,「ヒトと地球にやさしく洗う」を実現するための最近の考え方と課題を紹介する。
報文
  • 澤根 美加, 大田 正弘, 山西 治代, 本山 晃, 高倉 伸幸, 加治屋 健太朗
    2012 年 46 巻 3 号 p. 188-196
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル フリー
    皮膚には血管・リンパ管からなる微小循環系がはりめぐらされており,皮膚は全身の臓器と同様に,血管から栄養や酸素を供給され,リンパ管から過剰な水分や老廃物を排出されることで恒常性を維持している。皮膚の恒常性維持に微小循環系は重要と考えられるが,皮膚老化への関わりとその分子メカニズムについては未知な部分が多かった。本研究では,加齢による皮膚老化が循環系機能の低下によって引き起こされ,さらにその循環系機能を血管安定化にかかわる受容体Tie2 (endotheliumspecific receptor tyrosine kinase 2) が制御することを明らかにした。まず,ヒト皮膚組織を用いて循環系変化を解析したところ,加齢で血管およびリンパ管の構造が不安定化し,機能が低下していた。さらに,そのメカニズムはTie2の活性化の低下に起因していた。Tie2は血管と同様,リンパ管機能や成熟化にも寄与しており,Tie2の活性化が血管・リンパ管の安定化に重要であった。そこで,Tie2を活性化する薬剤を網羅的に探索した結果,ケイヒエキスを同定した。
  • 三井田 淳, 奥山 雅樹, 増渕 祐二, 鈴木 一弘, 栗林 さつき, 平井 公徳
    2012 年 46 巻 3 号 p. 197-204
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル フリー
    マスカラの構成成分の中で,皮膜形成性樹脂 (以下,樹脂) がカール効果およびセパレート効果に大きく影響することが知られている。従来からさまざまな樹脂の開発が行われてきたが,樹脂がもつ特性と,カール効果およびセパレート効果の関連についての詳細な研究は行われてこなかった。そのため,現存する樹脂では十分なカール効果およびセパレート効果を実現することができなかった。そこでわれわれは,より高い機能をもつ樹脂を開発するために,樹脂の塗膜強度と硬化速度に着目した塗膜挙動解析を行った。さらにこの解析結果に基づき,アクリル系樹脂のモノマー組成をコントロールすることにより,塗膜強度が高く硬化速度が速い,新規アクリル樹脂 (SCレジン) を開発した。SCレジンを配合したマスカラは,従来の製剤と比較してカール,セパレート効果が明らかに高かった。この結果から,塗膜挙動を制御することで,求める樹脂の開発が可能となることが示唆された。
  • 川畑 真理絵, 藪崎 次郎, 山川 弓香, 大場 愛
    2012 年 46 巻 3 号 p. 205-218
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル フリー
    皮膚状態を客観的かつ正確に評価する方法の開発は化粧品研究における重要な課題の一つであり,評価結果の表示は,定量性のある数値データと一目で直感的にわかりやすい画像などの視覚データの両方で行われることが期待される。皮膚の柔らかさや弾力性は,とくに顧客の関心が高いが,数値データで示せても視覚データで示すことは不得意である。そこで,われわれは,皮膚の柔らかさや弾力性について,数値データと視覚データの両方で表示可能な客観的評価法の開発を試み,球体落下試験法を考案した。球体落下試験法は,皮膚の真上から垂直に自由落下させた球体が皮膚に当たり跳ね返る様子を真横から高速度カメラで撮影し,時間経過に伴う球体の変位を数値データと視覚データの両方で取得するものである。球体落下試験法の測定パラメータの一つである受け止め時間t1+t2は,皮膚の柔らかさの官能評価値と有意に高い正の相関性を示した。また,跳ね返り高さh2は,皮膚の弾力性の官能評価値と有意に高い正の相関性を示した。これらのパラメータは,数値だけでなく画像でも表示可能であり,触覚的要素の強い皮膚力学的特性を視覚的にも表示する新しい客観的評価法となる可能性を見出した。
ノート
  • 山下 真司, 松井 康子, 戸叶 隆雄, 吉岡 正人
    2012 年 46 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 2012/09/20
    公開日: 2014/09/20
    ジャーナル フリー
    ヘアアイロンやコテのような高温の熱を利用した毛髪のスタイリングが広がってきているが,毛髪はこのような熱によりダメージを受けてしまう。そこで本研究では,毛髪の熱ダメージおよび,毛髪のアミノ酸組成における熱ダメージの指標について検討した。熱により毛髪中のシスチン残基からランチオニン残基が生成するため,毛髪のアミノ酸組成におけるダメージの指標として利用されてきたシステイン酸に加え,ランチオニンもダメージの指標として確認する必要があると考えられた。実際,ブリーチやパーマを施した毛髪ではシステイン酸の増加がみられたが,熱処理を行った毛髪ではシステイン酸でなくランチオニンの増加がみられた。さらに,熱処理による毛髪の水分量の低下や引張り強度の低下も確認した。以上のことから,熱処理により毛髪がダメージを受けると同時にランチオニンが増加し,熱ダメージの指標として毛髪のアミノ酸組成によるランチオニンの定量が有効であった。
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