日本化粧品技術者会誌
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原著
サクラン-ポリオール複合体の基礎化粧品への配合の可能性
—化学的, 物理的側面からのアプローチ—
土井 萌子佐川 由葵水谷 多恵子岡野 由利百瀬 重禎田中 巧正木 仁
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2017 年 51 巻 2 号 p. 117-125

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抄録

スイゼンジノリ (Aphanothece Sacrum) の細胞外マトリックスに含まれる硫酸化多糖は, Sacran (サクラン) と呼ばれ, 平均分子量2.9×107, 分子鎖長10 μm, 構成単糖11種類からなる超高分子多糖体である。構成単糖に硫酸基やカルボキシル基を含んでいることから, ヒアルロン酸の5倍もの保水力をもつ物質として新たなスキンケア成分として注目されてきた。これまでにわれわれは, サクラン水溶液が幼若モデル (皮膚損傷モデル) では表皮を透過すること, サクランを配合した保湿液でアトピー性皮膚炎の素因をもつ被験者の皮膚状態を改善することを報告している。またサクランは, 水溶性多糖でありながら乾燥後に形成されるフィルムは水に対する親和性が低下し水に対して溶解しにくいシートを形成すること, さらに1,3-ブチレングリコール (1,3-BG) 共存下で乾燥させることにより水に溶解しにくいゲル状シートを形成することを確認した。このゲルシートは水分蒸散を抑制し, 化学物質の侵入を防ぐことができたため, 皮膚表面で強固なバリアーとして働くことが示唆された。またサクランはポリオール共存下で安定した乳化能を示し, この乳化が油の極性に左右されないことから, サクラン分子マトリックス内に油を保持することで乳化能を持つと考えられた。つまりサクランとポリオールを共存させることにより, 乾燥するとゲルシートを形成し, かつ乳化剤としても働くことが明らかになった。以上よりサクランとポリオールを組み合わせることで肌の保護効果が期待できる。

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