日本化粧品技術者会誌
Online ISSN : 1884-4146
Print ISSN : 0387-5253
ISSN-L : 0387-5253
原著
水道水中の残留塩素による角層タンパク質のカルボニル化と表皮バリア機能への影響
古賀 一成山本 剛之中島 泰仁
著者情報
ジャーナル フリー

2024 年 58 巻 1 号 p. 30-37

詳細
抄録

水道水に残留する次亜塩素酸(以下,残留塩素)は,強力な酸化力を有することから生体への影響が懸念されている。しかしながら,水道水に残留している濃度の残留塩素が皮膚に及ぼす影響について詳細な報告はあまりない。そこで,本研究では残留塩素の皮膚への影響と残留塩素を除去した浄水の有用性を明らかにすることを目的とし,角層タンパク質のカルボニル化と表皮バリア機能に注目して検討を行った。残留塩素水の剝離角層への曝露は,有意に角層細胞のカルボニル化度を増加させた。さらに,残留塩素水をヒト前腕内側部へシャワーを用いた曝露においても,角層細胞のカルボニル化度が有意に増加することが確認された。この角層細胞のカルボニル化は残留塩素水曝露後速やかに進行することが確認された。また,実際の水道水の使用シーンを実験的に再現した環境下での皮膚への残留塩素水の曝露も角層細胞のカルボニル化を亢進し,その繰り返し曝露はTEWLの有意な上昇を誘導した。これらの結果は,水道水の使用には角層のタンパク質はカルボニル化の亢進と,表皮バリア機能の低下を引き起こすリスクが潜在的に存在している可能性を示唆した。今回の研究結果から,水道水の使用を浄水に置き換えることにより,角層の酸化ダメージと表皮バリア機能低下を抑え,皮膚の健康維持につながる可能性が示唆された。

著者関連情報
© 2024 日本化粧品技術者会
前の記事 次の記事
feedback
Top