2025 年 59 巻 3 号 p. 135-143
かゆみは頭皮の典型的な課題であり,その原因の1つとしてシャンプーに含まれる界面活性剤の頭皮へ吸着による刺激がしられている。これまで界面活性剤による皮膚刺激や吸着に関する研究は多く行われてきたが物理的性質から界面活性剤の角質層への吸着を言及した研究は少なく,とくに臨界ミセル濃度(CMC)は検討されていない。本研究ではアニオン界面活性剤の角質層への吸着を低減することを目的として,吸着指数を「皮膚pHにおけるアニオン界面活性剤のアニオン性の強さ×洗浄剤CMC」と定義した。吸着指数とケラチンパウダー吸着量の相関について検討した結果,吸着指数は有用な指標であった。また,吸着指数を下げる方法として分子占有面積の低減に着目し,両性界面活性剤の一種であるラウラミノプロピオン酸ナトリウム(LAP)の使用を検討した。その結果,LAPはコカミドプロピルベタイン(CAPB)と比較してCMCを効果的に低下させ,皮膚刺激も軽減することがわかった。これらの結果は角質層への界面活性剤の吸着量を減らすことでバリア破壊を抑制し皮膚刺激を軽減できることを示唆しており,安全で安心な化粧品の開発に貢献できるものと期待される。