1999 年 33 巻 3 号 p. 267-276
長い歳月にわたり繰り返し日光にさらされることにより, 皮膚にたるみや深いしわが生じる。光老化と呼ばれるこれらの皮膚組織の変化は, 真皮の細胞外マトリックス (ECM), とくにその大半を占めるI型コラーゲンの変性に起因するところが大きい。われわれは本研究において長期連続UVA照射下におけるヒト皮膚線維芽細胞のECM形成能および増殖能を調べた。その結果, UVA照射下においてI型プロコラーゲンの分泌は対照とほとんど差がなかったにもかかわらず, 細胞増殖およびECM形成は顕著に抑制された。活性酸素消去物質の添加は, 細胞増殖阻害に対してほとんど影響しなかった。またあらかじめUVAを照射しておいた培地で培養することにより, 細胞が直接UVAに被曝しなくても, このUVAの抑制効果を再現することができた。UVA前照射培地における増殖抑制はUVA照射培地に新鮮な血清を添加したときにはみられなかったことから, 低線量UVAの長期連続照射による細胞増殖とECM形成の抑制は, 活性酸素による直接的細胞傷害よりもむしろ増殖・遊走因子の変性に起因するものと考えられる。