日本化粧品技術者会誌
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33 巻, 3 号
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  • 鋤柄 佐千子
    1999 年33 巻3 号 p. 213-219
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    消費者や繊維関係者は, 布の性能を手で主観的に評価してきた。一方で布の物理的特性は客観的に測定することができる。ここでは, 主観的な性能評価法と客観的な評価法の関係を調べるために, 風合いや肌触りにかかわる4種類の性能評価方法を紹介する。まず代表的なのは布の風合いの客観評価方法である。この方法は, 現在新しい布の設計や生産工程での品質管理に応用されている。次に, 皮膚に布が水分によってはりつく特性をシミュレーションし, 布の快適性評価へ応用するための評価方法を述べる。また化粧用スポンジで頬をこすったときに感じるなめらかさをあらわす特性値を紹介する。最後に, 繊維の性質が繊維集合体である, わたの圧縮特性に及ぼす影響について述べる。
  • 板見 智
    1999 年33 巻3 号 p. 220-228
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    胎生期に形成された毛包は生後一定の周期をもって成長と退縮を繰り返す。この毛周期の調節にはEGF, HGF, PTHrP, FGF5などの増殖因子が関与する。EGF, HGFシグナル伝達に関わる転写因子であるSTAT3を表皮と毛包に特異的に欠損させるコンディショナルノックアウトマウスでは, 胎生期における毛包形成と初回の休止期までは正常であるが, 第2毛周期へ移行できない。このマウスの表皮細胞はEGF, HGF刺激による増殖は正常であるが, 遊走が阻害されている。すなわちSTAT3を介するシグナルは胎生期における器官形成には関与しないが成長期の開始に必須であると考えられる。ヒトの毛周期に影響を与える男性ホルモンの標的細胞が毛乳頭細胞であることが明らかになっている。男性ホルモン受容体の発現は髭, 腋毛, 前頭部の毛乳頭細胞に認められる。髭と男性型脱毛の前頭部の毛乳頭細胞はII型の5α-リダクターゼのmRNAを発現しているが, 後頭部の毛乳頭細胞ではI型の5α-リダクターゼの発現しか認めず, 男性ホルモン受容体の発現も少ない。髭, 腋毛の毛乳頭細胞は共存培養条件下で男性ホルモン依存性に外毛根鞘細胞の増殖を促進する。この男性ホルモン依存性のparacrine growth factorがIGF-Iであることをわれわれは明らかにした。一方, 男性型脱毛のモデルであるベニガオザルの前頭部毛乳頭細胞は男性ホルモン依存性に外毛根鞘細胞の増殖を抑制するが, これがいかなる因子によるのかはいまだ不明である。最近本邦でも使用可能になったミノキシジルは毛乳頭細胞におけるPGHS-1を活性化する。産生されたPGは毛乳頭細胞のIGF-I分泌を刺激することで育毛作用を発揮すると考えられる。フィナステライドはII型の5α-リダクターゼの特異的阻害剤であり, 男性ホルモン作用を阻害することで男性型脱毛の抑制効果を示す。今後, 毛周期に関与する転写因子を調節する薬剤の開発が期待される。
  • 池本 毅, 岡部 文市, 山本 直史, 中津川 弘子
    1999 年33 巻3 号 p. 229-237
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    香料による体臭のマスキング効果の持続性を高める方法として, 花香気成分の前駆体として知られる香気成分配糖体の応用について検討を行った。まずin vitro試験として香気成分配糖体を含む培地にてさまざまな種類の皮膚細菌を培養し, 生成した香気成分量と残存する配糖体量をGCおよびHPLC分析にて検討を行った。そして, 多くの皮膚細菌類が香気成分配糖体を代謝し香気成分を生成することを確認した。また, その生成量は菌種や配糖体の構造により代謝速度が大きく異なることも確認した。次に, 香気成分配糖体を身体に塗布したときの効果を確認する目的で, ヘッドスペースガス法を用いたin situ試験を行った。その結果, 香気成分配糖体を身体に塗布した場合にも香気成分が持続的に生成すること, その生成量は配糖体の構造や塗布部位において大きく異なることを確認した。さらに, eugenolを香気成分部とするeugenyl β-D-glucosideには持続性に優れたデオドラント作用のあることも官能試験により確認された。
  • 鈴木 留佳, 飯田 一郎, 染谷 高士
    1999 年33 巻3 号 p. 238-244
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    毛髪の「くし通り」はヘアケア製剤の重要な評価品質の一つである。われわれは「くし通り」の客観的評価法を検討し, コーミング動作を代用化する観点から多関節型ロボットを使用した新規評価装置を開発した。そして「くし通り」に影響を及ぼす処方因子を検証しその知見を製品化研究に応用することを目的として, ヘアリンス中のカチオン性界面活性剤が「くし通り」に及ぼす影響について, 開発法と従来の官能評価を比較した。その結果, 開発装置はカチオン性界面活性剤の配合量や種類による変化を精度よく検出することができ, 官能評価との相関が良好だった。すなわち, われわれが開発した客観的「くし通り」評価法は優れた評価法であり, 処方因子の影響を迅速に検出して製品化研究に応用できることが確認できた。一方, 本装置で健康毛とダメージ毛を測定した結果, その差が顕著に表れたことから, 製剤の評価だけではなく損傷毛の評価に対しても有効な手段であることが示唆された。
  • ゴマ発芽物中のリグナン配糖体
    久野 憲康, 土屋 欣也, 中島 成生
    1999 年33 巻3 号 p. 245-253
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    肌の老化を防ぐ化粧品に対するニーズはますます高まりつつある。従来から多くの研究者によって肌の老化を防ぐ作用を有する物質 (抗老化化粧品原料) の探索がなされてきたが, 皮膚老化に対して有用性が認められている化粧品素材は必ずしも多くなかった。近年では, 外界の酸化的ストレスから身を守ろうとする植物の防御システムが注目を集めており, われわれは, その抗酸化作用を化粧品原料に応用するための研究を行ってきた。本研究では, 抗酸化活性を持つ天然素材として“ゴマ発芽物”に着目し, その抗酸化能が主にリグナン配糖体に由来することを確認した。さらに, ゴマ発芽物からリグナン配糖体類の単離を行い, まったく新しい3種の配糖体を発見した。これらのリグナン配糖体について化粧品原料としての有用性を検討したところ, 有機ラジカル消去活性, ヒドロキシルラジカル消去活性 (ESR測定), 一重項酸素消去活性, スーパーオキシドジスムターゼ (SOD) 様活性, 紫外線照射によるスクアレンの酸化やフェントン反応系でのリノール酸の酸化に対する抑制効果を有することが確認された。これらの結果から, ゴマ発芽物中のリグナン配糖体類は, 抗老化化粧品原料として優れた素材であることが示唆された。
  • 野村 浩一, 高須 賀豊, 西村 博睦, 本好 捷宏, 山中 昭司
    1999 年33 巻3 号 p. 254-266
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    メークアップ膜の化粧くずれは多忙な現代女性の大きな悩みの一つであるが, この問題に着目した研究例は少ない。化粧くずれにはいくつかのプロセスが考えられているが, われわれが世界に向けて行ったアンケートでは「テカリの発生」がその重要なシグナルであるという結果が得られた。本研究の目的はその光学特性変化の原因を追究し, この現象の新しい解決策を提案することであった。化粧くずれの主な原因が皮脂の分泌であることはよく知られている。われわれが今回ヒト皮脂の各成分についてその化粧くずれに対する影響を調べたところ, 皮脂中の不飽和遊離脂肪酸が主な原因である可能性が示唆された。遊離脂肪酸の存在は皮脂の融点の降下などを招き, 結果的に化粧膜中の粉体と濡れやすくなることによって化粧くずれを助長した。これらの結果はわれわれに, 化粧くずれを防ぐ新しい方法が遊離脂肪酸の選択的吸着であることを示した。その目的を達成するために, シリケート層を物理化学的に修飾した粘土鉱物が化粧品素材として検討された。検討した粘土鉱物は酸化亜鉛担持アルミナピラードクレー (以下ZA-pilc) である。ZA-pilcを配合したパウダーファンデーションはin virtoおよびin vivo試験において化粧膜の光学特性の劣化が少なく, 結果として化粧膜のいわゆる「もち」を改善した。このような化粧くずれ防止の機能に加え, ZA-pilcはその遊離脂肪酸への吸着特性ゆえたとえばニキビ防止といった別の機能も考えられ, 事実, 今回行ったウサギを用いた実験でもその可能性が示唆される結果となった。
  • 池谷 宗大, 松永 由紀子, 西山 敏夫, 福田 實, 高松 翼
    1999 年33 巻3 号 p. 267-276
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    長い歳月にわたり繰り返し日光にさらされることにより, 皮膚にたるみや深いしわが生じる。光老化と呼ばれるこれらの皮膚組織の変化は, 真皮の細胞外マトリックス (ECM), とくにその大半を占めるI型コラーゲンの変性に起因するところが大きい。われわれは本研究において長期連続UVA照射下におけるヒト皮膚線維芽細胞のECM形成能および増殖能を調べた。その結果, UVA照射下においてI型プロコラーゲンの分泌は対照とほとんど差がなかったにもかかわらず, 細胞増殖およびECM形成は顕著に抑制された。活性酸素消去物質の添加は, 細胞増殖阻害に対してほとんど影響しなかった。またあらかじめUVAを照射しておいた培地で培養することにより, 細胞が直接UVAに被曝しなくても, このUVAの抑制効果を再現することができた。UVA前照射培地における増殖抑制はUVA照射培地に新鮮な血清を添加したときにはみられなかったことから, 低線量UVAの長期連続照射による細胞増殖とECM形成の抑制は, 活性酸素による直接的細胞傷害よりもむしろ増殖・遊走因子の変性に起因するものと考えられる。
  • 今中 宏真, 安藤 秀哉, 龍 敦子, 繁田 泰民, 岸田 聡美, 森 綾子, 牧野 武利
    1999 年33 巻3 号 p. 277-282
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    必須脂肪酸のリノール酸は, 培養メラノーマ細胞のメラニン生成を抑制する作用をもつ。メラニン生成酵素であるチロシナーゼの活性はリノール酸により抑制された。しかしながら, チロシナーゼmRNA量はほとんど変化せず, リノール酸のメラニン生成抑制作用はチロシナーゼ遺伝子転写後の調節によると考えられた。さらに, リノール酸はチロシナーゼの分解を促進することが明らかとなり, その結果としてメラニンの生成を抑制していることが示唆された。また, リノール酸はリポソーム化することによって水溶性製剤中でも安定に存在し, 経時的に角層下へ浸透することが確認された。リポソーム化リノール酸配合製剤を用いて肝斑を対象とした使用試験を実施したところ, 高い有用率が認められた。リポソーム化リノール酸は皮膚美白剤として有用であることが示唆された。
  • 菅原 享, 川相 みずえ, 細川 均, 鈴木 敏幸
    1999 年33 巻3 号 p. 283-289
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    ネイルエナメルを長期にわたって使用し続けることにより, さまざまな爪のトラブルを引き起こす場合があることが知られている。爪のおもなトラブルとしては黄変, 折れ, 二枚爪 (爪甲層状分裂症) 等があげられる。そこで, これらのトラブルのうち, 比較的発生率の高い折れおよび二枚爪に着目し, それらの発生要因を明らかにすべく, 折れおよび二枚爪の評価法の探索および爪中の水分含有量と爪の力学的特性の関係に関する基礎的な検討を行った。その結果, 折れやすさや二枚爪のなりやすさを評価するための折り曲げ試験機を開発し, 折れやすさや二枚爪のなりやすさを評価する方法を確立した。また, この評価法により, 折れは爪の水分含有量が少ない場合に起こりやすく, 二枚爪は爪中の水分含有量が多い場合に起こりやすいことが示唆された。
  • 橿淵 暢夫, 太田 尚子, 宮沢 雅一, 藤原 典雄, 木下 篤, 平井 義和
    1999 年33 巻3 号 p. 290-296
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    敏感肌はわれわれ化粧品開発にたずさわるものにとって大変重要な課題である。にもかかわらず, その実体はよくわかっていない。今回, その実体を明らかにすることを目的にいくつかの検討を行った。その内容は (1) 本人の肌意識 (自覚肌質) を形成している因子を問診をとおして明らかにすること, (2) そしてそれが年間をとおしてどのような変化をするかを明らかにすること, (3) 角質形態と自覚肌質との間に関連性があるかないかを検討することである。その結果, (1) 自覚肌質の形成には共通の体験がうかがえること, (2) 自覚肌質の分布は年間をとおして変化がないが, 個人は入れ替わっていること, (3) 角質細胞形態のなかには自覚肌質と相関のあるものがあるが, そのなかでは角質細胞面積との関連性が強く, 理論値からの乖離値との相関が最も高かった。その結果, 問診の結果と細胞面積の理論値からの乖離値を組み合わせることで自覚肌質を客観的に特徴づけることが可能となった。
  • 西村 博睦, 鎌田 勉, 武田 由有子, 本好 捷宏
    1999 年33 巻3 号 p. 297-300
    発行日: 1999/09/20
    公開日: 2010/08/06
    ジャーナル フリー
    紫外線を浴びたファンデーションが皮脂成分であるスクワレンの酸化を促進する可能性があることがわかった。このことは, (1) スクワレン, (2) スクワレンとファンデーションをそれぞれ人腕に塗布し, 太陽光1時間照射後のTBA法による酸化レベルの比較結果から示唆された。そこで, ファンデーションを構成する各種粉体に対して紫外線照射時のスクワレンの酸化レベルを検討し, 要因追求を試みた。この結果, 酸化チタンがその一つであることがわかった。次に, 酸化チタンをシリカで表面被覆した粉体を開発し, スクワレンの酸化を促進しないファンデーションを試作した。この開発ファンデーションの皮膚に対する影響をヘアレスマウスの背中を利用し, 従来ファンデーションと比較した。その結果, 開発ファンデーションが従来品より表皮変化では鱗屑, 硬結, 真皮変化では炎症性の細胞浸潤が抑えられていることが確認できた。つまり, 紫外線を浴びたファンデーションが引き起こす酸化促進を抑制することにより, 肌に及ぼす影響も緩和できる可能性を見いだした。
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