抄録
本研究は音声可視化システム,「観音システム」の構築を目的として, 音声データのスペクトル推定問題にMinimum Cross Entropy原理を適用する手法(MCE法)について考察したものである. MCE法は先見情報として事前パワースペクトルを利用し, 有限個の自己相関系列で与えられる拘束条件を満たすように事後パワースペクトルを推定する手法である. MCE法はJohnsonとShoreにより, 離散パワースペクトルの推定法として提案された手法であり,Burgが提案したMaximum Entropy法の1つの拡張であることが示されている. その後, 連続スペクトル推定への拡張や, 相関関数が不確定な拘束条件を適用した離散パワースペクトルに関するMCE法へと拡張され,さらに, MCE法とBurg法を組み合わせた手法も提案されている. 本研究では新たに, 不確定な相関関数による拘束条件を適用した連続パワースペクトル推定問題としてMCE法を定式化し, 実際の音声データに適用した結果を示す.