抄録
GPSキネマティック測位とは、基準となる地点に固定された受信機(既知局)と、移動体に設置された受信機(未知局)において、それぞれ複数の衛星から送られる搬送波位相を用いて移動局座標を求める測位法である。GPS 衛星からの搬送波には、L1帯, L2帯と呼ばれる 2つの周波数帯がある。従来、一般の利用者は民生用のL1帯のみしか利用できなかったが、最近のGPS受信機でL2帯の受信も可能となっている。さらに、欧州のガリレオと呼ばれる新たな測位システム、GPSにおけるL5帯の追加、また、日本でも準天頂衛星システムの構築が予定されており、多周波を利用することでより高精度な未知局座標の推定を行うGNSSと呼ばれるシステムが注目されている。そこで、本研究ではこれまでの1周波のみに対応するシステムモデルを多周波も扱えるように拡張を行う。また、現在利用可能なL1、L2帯を用いて実データによるキネマティック測位を行い、1周波と2周波での未知局座標の推定精度の比較を行う。