抄録
生体には歩行運動や呼吸,心臓の鼓動などの非常に多くの周期運動が存在する.このような周期運動は,脳内の特定のニューロンが作り出す様々な周期パターンにより発生していると考えられており,この運動の生理学的な解明や,このことを模倣する人工ニューラルオシレータの実現に関する研究が近年活発となっている.筆者らはこれまでに,スパイク列の時間タイミングにより情報を処理する点で非常に生体に近いモデルとして知られるスパイキングニューラルネットワーク(SNN)に,周期的スパイク列を学習させることによりスパイキングニューラルオシレータ(SNO)を実現する方法を提案している.また,ニューラルオシレータの応用においては,その安定性が問題となるため,周期的スパイク列の安定解析法の提案も行った.本稿ではこれらの研究を踏まえ,安定性を考慮したSNOを学習により実現する方法を提案する.