抄録
従来のMD同定法は,最小二乗法の問題点を克服するために提案された同定法である.しかし,この同定法の手順には,理論的な観点からその妥当性に疑問をさしはさむ余地がある.本稿の目的は,従来のMD同定法の問題点を克服した新たなMD同定法を提案することにある.そこで,インパルス変調公式に基づいて,連続時間系を異なるサンプリング周期で離散化した系の周波数応答の間に成立する関係式を導出する.この関係式が,異なるサンプリング周期で離散化された系の周波数応答の真値の間に成立することに着目し,さらに同定誤差の二乗ノルムを最小化することで目的とする周波数応答の推定値を求めることができる.これは,従来のMD同定法の問題点を克服した新たなMD同定法であるといえる.次に,提案した同定法を用いて空気圧サーボ系の同定を行ない,従来のMD同定法の結果と比較することで,新たなMD同定法の有効性を検証する.