抄録
不確かさが含まれるシステムの特性表現として、特性多項式の係数変動をl1ノルムで表現したダイヤモンド多項式がある。この多項式の安定判別法として、方向付き安定半径を用いる方法が提案されている。方向付き安定半径は係数変動の領域が係数空間上で凸多面体で表されるときに用いられるもので、係数変動にある限定を加えた場合の安定余裕を表す。また、その計算は制約条件付き最小二乗問題で定式化される。方向付き安定半径の係数の変動方向制約する領域は、凸多面体の一頂点を頂点に持ち、凸多面体を囲むような凸多面錐で表される。凸多面錐の表現には「凸多面錐の面の内側を表す半空間の共通集合」を用いて表す方法と「凸多面錐の辺の方向を表すベクトルの一次結合」を用いて表す方法の2通りがある。これまでの研究では、方向付き安定半径の制約条件は前者の表現を用いたものであった。本稿では、後者の制約条件の表現を用いることにより、その計算時間の短縮をはかる。