抄録
対戦型ゲームなどでは,対戦相手の戦略を推測することで次の自分の行動を決定し,展開を有利に進めることが重要となる.しかし,動的な環境や,相手との意思の疎通が図れないことなど,複雑な要因が相手の戦略を推測することを困難にしている. このような問題を解決する手段として,マルチエージェントシステムが研究されている.マルチエージェントシステムは生態系や社会システムのシミュレーションなど,多岐に渡る分野で応用されている. 本研究では,マルチエージェントシステムの一つである小規模の人工先物取引市場において,あるエージェントが出した注文と市場での取引結果から他のエージェントの戦略を推測することを目的とする. 先物取引シミュレーションには,U-Martを用いた.U-Martとは,工学と経済学のための共通のテストベッドを提供することを目的とした研究プロジェクトである. また,エージェントが保持する戦略を推測する(ルール表現する)手段として遺伝的プログラミング(GP)を用いた.GPの特徴の一つとして,言語的な記述により最適解を表現できるという点があげられる.これにより,エージェントの戦略を言語として表現することが可能となる. そこで,参加エージェントが2体の場合において数値実験を行い,一方のエージェントが学習した言語表現から相手エージェントの構造の解析を試みる.