抄録
現在,様々な生産プロセスにおいて,膨大な運転データを計測・保存できる環境が整えられている.しかし,蓄えられた運転データを,プロセスや運転の改善に効果的に活用できていない場合が多い.そこで本研究では,多変量解析手法を利用して,運転データから品質を改善できる運転条件を導出するための方法論を提案する.提案する統計的品質改善手法は,1)品質モデルに基づく運転条件最適化(オフラインプロセス解析),2)Run-to-Run制御によるバッチ毎の品質制御(運転条件更新),3)ローカルなプロセス制御,の3層からなる階層構造を有し,4)品質予測,5)異常検出・診断を目的とした統計的プロセス管理,の各要素技術に同一の統計モデルを利用することで,システム全体の整合性を保つことができる.また,統計的品質改善の実用化に際しては,1)定量的な品質変数のみならず,定性的な品質変数も取り扱えること,2)数多くの変数(運転条件)を同時に変化させることは現実的には不可能である場合が多いため,品質制御に効果的な少数の操作変数を選択できること,が重要である.このため,これらの課題への解決策も示す.さらに,提案法の有効性を示すため,鉄鋼プロセスを対象とした検討結果についても報告する.